闘い終わって…

2/6
前へ
/304ページ
次へ
「みね――」  言いかけてはっとした。美猫が目を開けてじっと見ている…… 結羽を。  寝ぼけ(まなこ)ではない。真剣な目で瞬きもせず見つめているのだ。  その目に魅入られたように結羽も10センチちょっとの近距離で美猫を見つめる。  時が止まったように思われた。  結羽がようやく口を開く。 「美猫…… 好きだ」 「…… 本当に本当? 」  美猫が不安そうに聞いた。 「あぁ、本当に本当だよ。キスしてもいい? 」  返事の代わりに美猫が目を閉じて結羽の背中に腕を回した。  やっと想いが通じた。互いに好きの熱量が同レベルになったのを感じた。  しばらくそうやっていたが、母屋から良子さんが「美猫さ~ん」と走り出してくるのが聞こえた。  結羽が慌てて身体を離す。 「母屋に戻って二人に無事な姿を見せておいで」  結羽が優しく身体を起こさせると乱れていた髪を整えてやる。 「一緒に来ないの? 」 「俺は遠慮する。久しぶりの自宅なんだから、家族水入らずで過ごしなよ」 「結羽も家族みたいなものでしょ? 」 「俺は…… 賃借人だ。だけどそろそろ美猫の恋人に格上げしてくれないかな? 」  その言葉に、美猫が恥ずかしそうに「もうとっくに恋人だよ」と囁いた。  いいところだったのに、良子さんの足音と呼ぶ声が近づいて来る。 「また、後で行きますから」  そう言うと、美猫がドアを開けて車から降りた。  
/304ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加