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「みね――」
言いかけてはっとした。美猫が目を開けてじっと見ている…… 結羽を。
寝ぼけ眼ではない。真剣な目で瞬きもせず見つめているのだ。
その目に魅入られたように結羽も10センチちょっとの近距離で美猫を見つめる。
時が止まったように思われた。
結羽がようやく口を開く。
「美猫…… 好きだ」
「…… 本当に本当? 」
美猫が不安そうに聞いた。
「あぁ、本当に本当だよ。キスしてもいい? 」
返事の代わりに美猫が目を閉じて結羽の背中に腕を回した。
やっと想いが通じた。互いに好きの熱量が同レベルになったのを感じた。
しばらくそうやっていたが、母屋から良子さんが「美猫さ~ん」と走り出してくるのが聞こえた。
結羽が慌てて身体を離す。
「母屋に戻って二人に無事な姿を見せておいで」
結羽が優しく身体を起こさせると乱れていた髪を整えてやる。
「一緒に来ないの? 」
「俺は遠慮する。久しぶりの自宅なんだから、家族水入らずで過ごしなよ」
「結羽も家族みたいなものでしょ? 」
「俺は…… 賃借人だ。だけどそろそろ美猫の恋人に格上げしてくれないかな? 」
その言葉に、美猫が恥ずかしそうに「もうとっくに恋人だよ」と囁いた。
いいところだったのに、良子さんの足音と呼ぶ声が近づいて来る。
「また、後で行きますから」
そう言うと、美猫がドアを開けて車から降りた。
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