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「…… 社長が追い返さなければ、朝までいます」
結羽を真っすぐに見る美猫の目は真剣だった。
「なら、朝まで一緒だ」
「うん、私、久しぶりに社長の歌が聞きたい」
「歌か…… そう言えば最近歌ってないなぁ。ヨシ! じゃあ、食事が終わったら、美猫の為に歌ってやる。美猫のためだけに歌うから」
「うん、それが一番嬉しいかも」
「俺の歌聞いたら、どうなるか分かってる? 」
「分かってます」
「言ってみて」
「…… 抱かれたくなる… 」
「うん、大変よくできました」
「もー! 」
「美猫さぁ、そんな離れた所じゃなくて俺の隣に座れよ」
結羽が横の椅子を後ろに引いて誘う。
「いいけど…… でも食事の間は変なことしないでよね。せっかくのご馳走の味が分からなくなるから」
「スキンシップくらいいいだろ? 」
「ダメ! 私は結羽みたいに器用じゃないから、同時にいろんなことができないから」
そう言うと、箸で唐揚げを掴んで結羽の口に押し込んだ。急に口の中に唐揚げを突っ込まれて、結羽が焦っている。
「ほらね、しゃべるのと、食べるのと一緒にできないでしょ? 」
「そうかな? じゃあ、こういうのどうだ? 」
結羽が立ち上げると素早く美猫の横の椅子に座った。
「何? 」美猫が不安そうに見つめる中、結羽が美猫のワインを取り上げてクイッと口にすると、美猫を抱きしめてキスをした。それから少しずつ舌で美猫の唇を押し開き、含んでいたワインをそこに注いだ。
ごくん、ごくんと美猫の喉が音を立てる。
唇を美猫から離した結羽が聞いた。
「どうだ? キスされながら飲むワインの味、前より甘くなっただろ? 」
美猫はもうこの時点で酔っていた。
「おいで。酔っぱらってしまわないうちにベッドに行こう」
結羽が美猫を抱きかかえると、寝室へと連れて行った。
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