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夕闇の空を、赤く、黒く、不気味な色に染めて、炎は悪魔のように燃え盛る。
「あ……あ! あああぁーー!!!」
涙で目の前が霞む。
気持ちの悪い熱風が押し寄せ、私の身体を包む。
赤と黒の世界が、目の前でゆらゆらと揺れている。
燃え盛る火の中で、断末魔の叫び声をあげる恋人と親友の姿が、熱を持つ目の奥に浮かび、私はヒリつく喉を苦しいほどに押さえて、ただ泣き喚いていた。
私は、恭平と聡美に、私達の秘密を告白し、懺悔する事もできなかった。
貴方達は、誠実に告白してくれたのに……。
狡い私は、丈一との事は『墓場まで持って行く秘密』にして、恭平と幸せになるつもりでいたのだ。
そんな浅はかな考えが、こんな悲劇を生んでしまった。
もう今となっては、本当に墓場まで持って行かなければならない秘密。
いつかその墓場で彼らに会う時、恭平と聡美は、修羅の形相で私を待ち構えていることだろう。
『穏やかな二人』の『穏やかな表情』は、もう私には思い出せない。
業火に焼かれなければならないのは、大切な人を裏切り、丈一を狂わせてしまった私の方だった。
熱風に晒され、暗闇と化した空を、悪魔のように赤く染め続ける炎を見つめながら、私は喉の奥で声にならない叫び声をあげ続けていた。
――了――
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