彼女の場合

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彼女の場合

髪を切ってきました。 あなたは、 長い髪を 後ろで結んだのが好き って言ってたのに。 ごめんね。 鏡に映る、 髪の短くなった自分を見たら、 また泣きそうになってしまいました。 だめね。 一人きりになっても 相変わらず、 泣き虫は直っていません。 あなたと出会ったころは、 いつも笑っていたはずなのに、 「君の笑顔が好きだよ。」って あなたも言っていたのに。 いつの間にか、 だんだん 泣き虫になってしまった私。 あなたのことを 好きになればなるほど 泣き虫になって、 会えないと淋しくて、 あなたを困らせてしまった。 笑顔を見せて、 元気づけたいと思っているのに、 会えば わがままばかり言ってしまう。 どうして、 こんな私になってしまったんだろう。 どうしたら、 あなたを困らせないで、 あなたの力になれる 私になれるんだろう。 私はいつの日からか、 そればかり 考えるようになってしまった。 あなたを困らせて、 重荷になってしまっている自分が もういやなの。 あなたに 幸せにしてもらうんじゃなくて、 自分の力で 幸せになれなければ、 あなたといて 幸せになれない。 あなたのそばにいられない。 そう、思ったの。 だから、 一人きりになることにしました。 あなたに さよならも言わないで 出てきたのは、 あなたの目を見たら さよならを言えなくなるから。 また泣いて、 一緒にいてって 駄々をこねてしまう、 きっと。 そう思ったの。 でも、 あなたといて 不幸だったわけじゃないのよ。 わかって。 淋しくて泣いただけ、 それだけあなたといると 幸せだとわかったの。 私にとって、 あなたがどれほど大切な人だと わかったの。 それなのに、 手紙も書かず、 ただ、鍵だけを封筒に入れて、 ポトリとポストに入れました。 ごめんね。 ひどいよね、こんなの。 でも、そうするしかなかったの。 ほんとうは…、 鍵を返したくなかった。 いつでも帰ってこられるように…。 いつの日か、 一人でいても、 いつも 笑っていられるようになったら、 そして、 あなたが 私を許してくれるなら、 そのとき私は あなたの元に帰ります。 こんどこそ ずっと、 あなたのそばにいたいから。
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