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15 次の日の朝、浩市は1人で大学に向かい先ずは、大橋の様子を探った。 大橋は少し、足を引きずってはいるが元気そうに見える。 大橋教授の部屋に行き何も知らない素そ振ぶりで、浩市は昨日の事を大橋に聞いてみた。 大橋の部屋は、教授だけに与えられる物で、12畳ぐらいの大きさである。 大橋用の机と、来客用のソファーとテーブルが置いてある。 本箱には、専門書と百科事典等があるが、綺麗なままで、使った形跡が無い。 大橋は、人の気持ちを掴む事に長けた人物で、人間関係を上手く利用して教授にまで昇りつめた男だ。 大橋は、それ程優秀な人間ではない。 研究は全て助手にさせ、成果のみを自分の物にする、ハイエナの様な人物である。 「おはようございます。昨日の麗華のマッサージは、いかがでしたか?」 と、浩市は明るい声で大橋に挨拶をした。 大橋は浩市の顔を見ているが、何も言わない。 不機嫌そうな、目付きで浩市を見つめている。 「どうかされましたか?教授。何か不都合でもありましたか?」 と、浩市は素知らぬ顔で訊ねてみせた。 「君は、妹さんから何も聞いて無いのかね?」 と、訝い表情で聞いてきた。 「何かあったのですか?」 と、驚いたふりをし、白々しく聞いてみた。 「いや、聞いてないならいいが、・・・・・。 君、困るよ。妹さん、急に怒り出して帰ってしまっては・・。」 「何か、あったのですか?妹から何も聞いていませんが? 不都合でもあったのですか?」 「別に、不都合は無いが、妹さん急に不機嫌になったのだよ。女は分からんよ。」 と、大橋は何も自分に非は無く、麗華に襲いかかった事にも全く触れずに、 不愛想に言った。 「そうですか、そんな不都合があったのですか? 今すぐ麗華を連れて来て、謝罪させます。 しばらくお待ち下さい。直ぐに連れて来ます」 「そんな、今すぐで無くても・・」 と、言う言葉も聞かず、浩市は大橋の部屋を後にした。 そして自分のマンションへと向った。 マンションに着くと浩市は、麗華と細かな打ち合わせをした。 そして大橋の元へ麗華と共に出かけて行った。 この素早い行動は、新美浩市の持ち味でもある。 今日が、命日となる事も知らずに・・・・・。 教授部屋では、大橋は期待するかの様に麗華を待っていた。
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