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18 それ以外は、普段使う文房具などが有り、事務室はこれと云ってさほど見るものは無い。 新美のマンションの部屋に入りたい と云う強い欲望に駆られたが、 セキュリティが万全な所には、そう簡単に入いれない。 私は残念な想いであったが、チャンスは直ぐに訪れた。 次の日、警察からの誘いがあった 「新美の部屋を捜索したいので、立ちあって欲しい」と言われたのだ。 私は、喜びを隠しながら事務的な態度をとり対応した。 新美には、友達と呼べる人も無く、私が新美と一番親しいと、 誰かの進言があったみたいだ。 刑事達と一緒であるが、初めて入る新美の部屋だった。 此処には、当然であるが、盗撮器、盗聴器は仕掛けてはいない。 そこは、いわゆる3LDKで一人で暮らすには、贅沢に感じた。 私の部屋とは大違いである。 間違いなく、新美にはスポンサーが居るはずだ!云い知れない嫉妬の感情が、うごめいた。 その部屋も、整然と片付けられており、綺麗に掃除されている。 本箱には、色んな本が置いてあった。 専門書が多くある中、法律の本が有り、推理小説も何作もあった。 新美の遺体は、解剖に廻され、明日返って来るとの事であった。 私は、昨日の現実が、夢の様に思えてならない。 麗華の姿は、以前として判らないが、ショックの余り友達の所でも行っているのであろう、と推測されている。 新美の洋服や、麗華の服が4着ほどクロウゼットの中にしまってあった。 その中にあの日着ていた赤いドレスもある。 そのドレスに興味を持ったのか、女性刑事は布地を確かめる様に触っていた。 冷蔵庫には、普通の食材しか無かったが、点滴に使う様な物があった。 新美は此処で点滴をしていたみたいだが、何故?と強い疑問が湧いてきた。 新美は医師ではない。誰かに点滴をさせるのか?または、誰にするのか? 謎が謎を呼ぶ様に感じた。 この部屋を捜索する中で他にパソコンは無かった。新美ほどの科学者がパソコンを一台しかないのは気になったが、部屋には無かった。 パソコンは、ノートパソコンだけと云う事であろうか? だとするならば、私が持っている新美のパソコンが開いた時、 新美の全てが判るはずだと、希望がもてた。 また、ベッドが一台しか無いのが不思議であった。 しかも、シングルベッドである。 ソファーがあるが、ベッドにはならない。 新美は麗華と一緒に寝ていたのであろうか、シングルベッドで? 布団も、一組だけである。 本当に新美は麗華と此処で暮らしていたのか? 麗華とは、兄妹では無く恋人ではないのか? 昨日、押収したノートには、 新美は赤児の時に母親から捨てられたと書いてあった。 それであるならば、麗華と兄妹になる可能性はほとんど無い! こんな、簡単な事に今まで気が付かなかったのかと、自分を責めていた。 刑事達は、興味深く部屋の中を観察している。 だが、何も会話していない。何処かのモデルルームを見学しているみたいだ。 「刑事さん。大橋教授は、何故新美を殺したのですか?怨恨ですか?」 と、私は刑事に突然聞いてみた。 刑事は二人来ており、一人は女性で岡と名乗っていた。 美人で、刑事と聞かなかったら、モデルと云われても信じてしまいそうである。 「今、捜索中なので、何も言えませんが、今、怨恨と言われたのはどう云う意味でしょうか?」 と、岡刑事が聞いてきた。 「余り故人の悪口は言いたく無いのですが新美は、生活態度が余り良く無くて、友達も居ないぐらいの男です。 教授とも気があっていなかった。教授も‥‥。」 と、私はそれ以上を言うのは控えておいた方が良いと判断した。 教授の事を考えての事でもある。 すると、もう一人の男性の刑事から、質問を受けた。 「大橋と新美君は仲が悪かったのかね?」と、威圧的な言い方で質問を受けた。 「仲が良いとは言えません。大橋教授を新美は馬鹿にしていましたから。」 と、私は意識して意味ありげに答えた。 「教授を馬鹿にしていたとは?どう云う事だ!」 と、更に威圧的に質問してきた。 まるで私が、犯罪者みたいな言い方である。 それを、諌めるかの様に、岡刑事が優しく丁寧に私に問といてきた。 「大橋教授と新美さんの関係を詳しく教えていただけませんか? 大橋教授の証言が、少しおかしなところがあり、こちらも理解不能なのです。 出来れば署まで来て頂いただくと助かるのですが?」 と、女性らしく優しい声で私に任意の同行を求めてきた。 「判りました。御協力しますが、もう少しこの部屋を観察したいのですが?」 と、言って刑事の様子を伺った。 「何を、観察するのかね?」と、男刑事が威張る言い方をした。 「新美と私は同じ助教授なのですが、私と同じ収入であるならば、 この部屋には入居が難しいと思うのです。 何か別の研究をしていて、スポンサーが付いていた様に思うのです。それを探してみたいのです。」 「なるほど、そのスポンサーと、大橋の関係も視野に入れると云う事ですね」 と、女性の岡刑事が丁寧に云った。 「では、捜索しようじゃないか」と、男刑事がぶっきらぼうに威張って云った。 箪笥の中や、机の引き出しなど調べてみたが、大橋に繋つながる物は出てはこなかった。 「新美さんは、本当に妹さんと暮らしていたのですか?いつからでしょうか?」 岡刑事が不審に思ったのか私に、聞いてきた。 「いつからか、ハッキリとは知らないのですが、私が妹さんに初めてあったのは、今週の日曜日です。大橋教授の研究の発表のあった日です。 あれも、大橋教授の成果にしてはいますが‥‥‥」 と、私は意識的に言葉を濁した。 「君は、言いかけては止めるね!はっきりと言いなさい。気になるだろう」 と、責める言い方を、男刑事はしてきた。 私の思惑く通りの展開である。 「あの研究も、ほとんど新美君がしたものです。 だから、新美君は教授に対して良い様に思ってはいなかった」 と、私はハッキリと言って、改めて男の顔を覗いて見た。 髭面の怖い顔である。 「だとすると、大橋教授は新美さんを必要としていた事になりますね。 殺す動機は何でしょうか?」 と、岡刑事が不審に思ったのか私に質問してきた。 「でも、新美が大橋教授にその事で、何かを要求していたと考える事、出来ませんか?」 と、私は答えた。 成程と、納得した表情であったが、岡刑事は 「私、少し気になるのです。麗華さんの事が。」と、 可愛いく澄すんだ声で云ってきた。 「何でしょうか?」と、私は岡刑事に聞いてみた。  「此処に来て不思議に想う事があるのです。」 「何だね、不思議な事って?」男刑事が疑問に思ったのか聞いてきた。 可愛くない、おっさんの声である。 「麗華さんの服はあるのですが、下着が無いの。それに、化粧品とか女性に必要な物が無いの。 おかしく無いですか?本当に一緒に暮らしていたのでしょうか?この部屋で」
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