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なるほど、女性ならではの観察である。
もしかすると別々に暮らしていたのかもしれない。
ベッドも一つしかないし、ここで一緒に暮らすのは無理だと
考える方が自然である。
「だとすると、麗華さんは、別の所に住んでいますね!
そこに麗華さんはいるかもしれませんね。」
と、私は言った。
新美と麗華はただの知り合いと、嫉妬心からだろうか?その様に思いたい気持ちで一杯であった。
それから、私は事情聴取を受け参考人として、警察署で話をしたが、同じ事の繰り返しを話しただけであった。
だが興味深いことを男刑事から聞いた。
「それは内密の話であるが、大橋教授の証言に
『麗華の首が百八十度回った!あいつは化け物だ』と言っている。
と、言い訳に過ぎない馬鹿な事を云っているというのである。
大学教授でありながら、直ぐにばれる嘘をつくのかと
大橋教授とはその様な人物か?」と
問いてきたので、私は
「大学の教授と肩書はありますが、大橋は頭はそれほど賢くはないです」
と、私の想いを伝えて帰宅した。
佐伯が帰った後、岡刑事と竹中刑事は、思案していた。
大橋が新美を殺害した理由と動機が解明できなければ、
意図的に殺害したのか?過失なのかの判定が出来ない?
大橋は、「新美を殺す意図は全く無く、麗華が化け物だったので、麗華に向かってゴルフクラブを打ち下ろした。」
との証言を繰り返しており、肝心の麗華の存在が未だに不明では、
どの様に対応していいのか判らない。
また、新美が大橋を快く思っては、いなかったみたいだが、
大橋には、新美が必要だったのではないか?
大橋には、新美を殺す動機が解らない。
しかし、新美の頭蓋骨を骨折させ脳にまで損傷を負わせる位の力で殴ったのは、
殺す意図があったはずである。この矛盾に二人の刑事は困惑していた。
「この事件、前の事件に似て無いか?」
と、竹中は岡に聞いた。
「あの事件ですね。水原学の事件ですね。」
(前出の小説*私は誰⁉️)
「お前もそう思うか?科学者の考える事って良く判らん」
「私、新美の子供の頃に居た養護施設に行ってみたいです。
そこに、解く鍵がありそうな気がします」
と、岡刑事が呟く様に言ったが、目は燃えていた
「そうだな。それほど遠くは無いので、明日でも行くか」
「そうですね。明日行きましょう。」
二人の刑事の意見が合った瞬間であった。
その頃、私は自分の部屋に居た。
新美のノートパソコンを前に苦戦していた。
パスワードが判らないのだ。
このパソコンに新美の全てがある様に感じている。
先ずは、パスワードが何であるかだ。
新美の事だ、複雑なパスワードであろう、と思いながら
思いつくまま入れたが、全然ヒットしない。
パソコンを開くのは諦めて、もう一度、新美の日記を読んだ。
前回は一通りさらっと読んだが、今度は入念に読んでいった。
此の日記は、新美が小学二年の頃から付け出してあり、
毎日書かれたものではなく、書かれてある日付が飛んでいた。
そして、高校卒業の頃まで書いてあった。
読んでいくと、気づいたのだが、人の観察をする箇所が何回も出てくる。これは日記と言うよりも、観察レポートに近く、
此の頃から新美の人間嫌いが始まっていたのかも知れない。
始めは、子供同士たわいもない事だが、新美が成長してからは、
養護施設の職員や、経営者(大人達)の事を、まるで監視しているかの様に詳しく書いてある。
私は、この日記の中で気に掛かる事があった。
麗華の事が余り書かれていないのだ。
麗華とは、新美は兄妹では無く、おそらく他人であろう。
新美は麗華と二人で写真に写る仲なのに、またその写真を大事に残して
きたのに、日記に麗華の事を何故書かなかったのか?
麗華が突然居なくなってから、新美の大人達の観察の記述が増えてくるのが、
不思議であった。
これを、解明するには、新美の育った児童養護施設に行き
情報を得たいと強く思った。新美とはどの様な人物なのか?
必ず、解明するとの更なる強い想いが湧いて出てきた。
次の日曜に新美の育った養護施設に行く事を決意した。
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