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まただ。隣のクラスの柚木透子さんが、私のクラスをのぞいている。横目でチラッと見て教室に入ろうとしたら、柚木さんとバッチリ目が合ってしまった。
「あ、仲道さん、凛太郎呼んでもらえるかな」
はいはい、土岐くんね。
私は教室の一番奥の列にいる土岐くんに声をかけた。
「土岐くん、柚木さん来てるよ」
「あぁ、ありがとう」
土岐くんが顔を教室の入口に向けると、そこから顔をのぞかせていた柚木さんが手招きをする。
「帆夏、また柚木さん?」
「うん。あの子きれいだよね」
「この前もバスケ部の男子がコクってフラれたって言ってたよ」
「柚木さんには土岐くんがいるんだから玉砕だよね」
友達の美沙希も言うように、彼女はとてもモテる。柚木さんはぱっちり二重で、色白で、明るくて友達もたくさんいる印象。そりゃモテるよね。玉砕者続出と噂の美人。
「でもなんであんな美人が土岐くんなんだろうね。背が高いわけでもないし、顔も普通だし」
「美沙希、見た目が全てじゃないよ」
「なんかさ、瀧廉太郎みたいな名前だし」
「瀧廉太郎……土岐凛太郎……」
似ている。土岐くんには申し訳ないけど、ちょっと笑ってしまった。
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