放物線を描く

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　週末、美沙希と映画を観にシネコンへやってきた。人気ドラマの続編が映画化されて、その情報を目にした時から、美沙希と観にいく約束をしていた。

「めっちゃ楽しみだね。早く北村亮(きたむらりょう)に会いたい〜！」
「ドラマ、すごい気になる終わり方だったよね」

　美沙希と時間まで入り口付近でおしゃべりしていたら、急に美沙希が焦った様子でささやいた。

「柚木さんと松浦くん！　あそこ！」

　映画を観終わって出てくる人の中に、柚木さんと松浦くんが手を繋いで歩いているのを見つけた。仲良さそうに話しながら歩いていて、誰がどう見ても恋人同士にしか見えない。
　私たちは息を潜めた。どうか見つからずに通り過ぎますように。
　鼓動が低く身体中に響く。目の前のことにびっくりしすぎて、頭が回らない。
　小さくなっていく二人の後ろ姿が見えなくなって、美沙希が口を開いた。

「柚木さんって、松浦くんと付き合ってんの？　え？　土岐くんとはどうなってんのよ、どういうこと？」

　松浦くんは同じクラスの男子。わりとモテる方だと思う。でもなんで松浦くん？　もしやうちのクラスによく来るのも、土岐くんじゃなくて松浦くんが目当てだったの？
　胸がザワザワする。嫌なことは考えたくない。でも……。

　楽しみにしていた映画だったが、柚木さんと松浦くんのことで頭がいっぱいで、映画に集中できなかった。