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「意外と入らないもんだね」
「だろ、結構距離もあるし難しいんだよね。まぁ、簡単だったら願掛けにならないけどね」
投げる直前に、一瞬だけ真顔になる。そしてゴミ箱めがけてペットボトルを投げる。私たちはその軌跡を目で追う。
「あぁ! またダメだ」
「焦らない! 焦っても入らないよ」
「そうだな」
私はペットボトルを手に取った。ふと、ある思いが脳裏をよぎる。
「ねぇ、私も投げてみたい」
「え? やってみる?」
土岐くんがこんなに投げても失敗続き。どれほど難しいのか、ちょっと試してみたくなった。
私と土岐くんは場所を入れ変わった。
「どうせ入らないから気楽にね〜」
「なんで決めつけちゃうのよ」
気楽に、気楽に。土岐くんがいる方に。思い切り投げた。
「わっ!」
ゴミ箱じゃなくて、土岐くんに命中した。
「え、何。わざと?」
「あ! ごめん! 手元狂って」
「絶対わざとだろ」
「え〜、そんなふうに思うわけ?」
「ヘタクソ」
「どっちが」
土岐くんは笑った。私もつられて笑った。「もう一回!」と土岐くんはペットボトルを私に投げた。キャッチしそびれて、おでこに命中した。
「あ、ごめん。わざとじゃないよ」
「分かってるよ! 私がちゃんと取れなかっただけだよ」
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