今日について

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今日について

僕は一体いつ壊れたんだろう。 どこでこんな風になったんだろう。 何かとんでもない出来事が起きたんだろうか。 大きすぎる悲しみや苦しみがあったのだろうか。 違うな。そういうんじゃないと思う。 普通の人生を送ってきたはずだ。別に特別なことは無かったけれど、悪い人生ではなかったはずだ。 なのにどうして今僕は、こんな汚い部屋で、こんな安い酒を飲んでるんだろう。 酒、そう、酒だ。酒が僕を壊したんだ。 悩みは解決した。 僕はさっさと残り少ないアルコールを飲み干し、カシャッと次のプルタブを引っ張る。 ……今日は何をしただろうか。 脱ぎっぱなしの服の山を見ながら考える。 朝、というより昼か。そのくらいに起きて、迎え酒をした。 昨日はあまり酒を飲まずに寝たので、頭痛がすることはなかった。 動く元気が出たので、家にある袋麺を茹でる。何日連続でこれを食べているんだろう。 まあ、結局こういうのが美味いんだから仕方ない。 水を小さな鍋に注ぐ。コンロをつける。面倒なので、麺も粉末も先に入れてしまう。軽く混ぜる。スマホをいじって待つ。食べる。変わらない味だ。食べ終わり、汁をシンクに捨てる。洗い物は後でいい。 その後は何をしただろうか。 万年床の薄い布団にくるまって、動画を観ていたな。 何を観たかは覚えていない。昔やってたゲームの実況動画を観たかな。それ以外も観たような気がする。 それで……夕方になったか。朝に飲んだ酒が抜けてきた。小さな冷蔵庫を見ると、缶が2本しか無い。なので、自転車を走らせて往復15分程のスーパーに向かった。 酒を買い、つまみを買った。何となく奮発して、ビーフジャーキーを買った。無駄な出費だ。 酒を飲む。脳に栄養が行き届く。だからといって何かする訳ではない。ビーフジャーキーをガジガジと噛みながら、動画を観る。 それで、今に至る。 昨日とほとんど変わらない1日だ。一昨日も、その前の日も、その前の日も、その前の日も同じような1日だった。 そしてこんな下らないことを考えている。本気で解決しようとしていないのに、無意味に悩んでいる。 ……本当にそうなのだろうか。 何って、酒の話だ。 僕がこんな風になったのは酒のせいなのだろうか。 違うんじゃないか? 元々僕はこうだったんじゃないか? 酒で自分が、隠そうとしていた自分が出てきてしまって、こんな事になったんじゃないか? 学生時代の夏休みを思い出す。 あの時はスマホで動画なんか観ていなかったし、酒なんかもちろん飲まなかった。 それなのに、あの時の僕は何もしていなかった。 テレビを適当に付けながら、だらだらと寝転んでいた。 そっか。あの時のままなんだな。 何か大きな出来事が起きたんじゃないんだ。 僕には何の出来事も起こっていないんだ。 嫌な気分になってきた。これが嫌だから酒を飲んでいるのに、本末転倒じゃないか。 今日はもう寝よう。缶の中にはまだ半分残っているが、どうせ明日の僕が飲むだろう。 横になる。今日もまた、何もしていない。
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