バレンタインチョコレート

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今日は2月14日、バレンタイン。 彼から用事があるから家に来てって言われたから、今向かっている途中だ。 私の手には小さな花束。 これくらいしか買えないほど給料が少なかった。 それでも、気持ちは伝わるといいな。 ガチャ。 扉を開けると、彼が大きな花束を持って待っていた。 「ハッピーバレンタイン!」 私にその大きな花束を渡してくる。 「えっ…!今日はバレンタインだよ……?」 私は花束を受け取りながら、彼に聞いた。 今日はホワイトデーじゃないよ? 「そうだよ。あれ、逆バレンタインって知らない?」 知ってるよ、知ってるけど……。 「んでさ、花言葉とかあんまり詳しくないのかな……。」 これは私に向けられた言葉だ。 慌てて花束を見た。 花束には一輪の赤いバラが。 これの花言葉は…たしか。 「僕と結婚してください」 私の頭で花言葉の意味が浮かぶ前に彼の言葉が重なった。 私は、玄関の前でしばらく静止していた。 「ごめん、いきなりで驚いたよね。部屋に上がって、ここ寒いよ」 彼は私に手を差し伸べた。 と、私の手元に気づいた。 「あれ、花束買ってたんだ」 小さくうなずく。 まさか彼の告白がこのタイミングで来てしまうとは。 「あのね、私も花言葉込めたんだけど」 彼は私から花束を受け取る。 そしてひときわ輝いた花を見つめた。 「この紫っぽいコスモス?がメイン?」 「うん。」 私は、彼に向かってずっと考えてきた言葉を放った。 「チョコレートコスモスっていうの。」 へえ、バレンタインにピッタリ。 彼は嬉しそうに花束を抱えた。 「じゃあ部屋に入ろうか」 私は首を横に振る。 「チョコレートコスモスの花言葉は、恋の終わりなの」 だから、ごめんね。 私の声は彼が花束を落とす音にかき消された。 「ごめんね」 彼が嘆く声を聞くと、過去の私に伝えたくなった。 ちゃんと気持ちは伝わったよ、って。 完
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