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「陽子! 危ない!」
「一緒に逝こうよ! 陽子さん」
キラリと男の手元が光ったと思ったら、私は腕を下から引っ張られて間一髪ナイフを交わした。
「陽子さんに触るな! チャラチャラしやがって! メスブタ!」
「クソ陰キャが! 陽子走って!」
体勢を立て直し、講義室をドアに向かって走った。
後ろから気持ちの悪い声が汚い言葉を口走っている。
周囲にいた連中は、スマホをかざして撮影しているのがほとんど。
一部では警備員か先生呼んできて!と声をかける人もいてくれた。
自分に降り掛かった災難なのに、どこか他人事のようにも見える。
正気を保っていられたのは、美月が手を引いてくれているから。
講義室のドアを出て、一目散に大学をあとにした。
二人して駅前にある噴水のフチに座り込む。
激しい動悸が落ち着くまで喋れずにいた。
どれくらい肩で息をしていただろうか。
「……なんなの…」
「どこも怪我しなかった? 陽子」
「怪我はない……」
「ごめんね、陽子。まさかあんなことになるなんて……」
「いいよ。助けてくれてありがとう」
「あいつ、今度あったら許さない…」
「美月……目が合うって言ってたのは……」
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