言わせて

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「ねぇ、野間ぁ」  いつもと変わらぬ言い方に勝手に拗ねてしまう。  机に突っ伏したまま顔だけ向けると、ひなは首を傾げながら俺の前の席に座った。 「貸さねぇ」 「まだ何も言ってないでしょ?それにノートじゃないし」  五時間目が終わって六時間目までの僅かな時間。  その時に話しに来てくれたのは嬉しい。  でも、昼に勢いのまま飛び出して空振ったショックはデカい。  告る気で走った俺は勝手に打ちひしがれて教室に戻った。  そんなこと知らないひなはいつものように友達と笑って楽しそうにしていたから。  俺の方なんて見もしないで楽しそうだったくせに……拗らせているとは自覚しているが、簡単には切り替えられなかった。 「あのね、今度の日曜、中学のメンバーで会おうって言ってるんだけど野間も……」  イスに横向きで座ってこっちなんかじゃなく教室の中を見ているひな。  俺に話しているくせにこっちを見ていないことがショックで、俺は思わずその手首を掴んだ。 「え、何?」  ひながびっくりしたようにこっちを向く。 「……ちょ、こっち」  引っ込めかける弱さを振り切って、俺はその細い手首を掴んだまま廊下に出た。
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