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廊下にもちらほら人は居る。
それでもあと数分で授業は始まるし、これ以上教室から離れられなくて俺はひなを見下ろした。
元々俺の方が小さかったし、中学の初めは頭一つ分違ったひな。
いつの間にか俺の方が頭一つ分大きくなっていて、訝しむようにひながこっちを見上げる姿を見てちょっと嬉しくなった。
「何?もう授業始まるって」
手を離して教室に戻ろうとするひなの手をちょっと引いてもう一度こっちを向かせる。
「それって男も来んの?」
「何が?」
「日曜」
「だから、野間も誘ってるんでしょ?えっと、遠野と佐屋、島浦……」
ひなの口からどんどん出てくる他の男の名前。
「ヤダ」
「は?」
「行くなって」
「何言って……」
「好きなんだよ!」
口にしたのに無情にも鳴るチャイムの音。
「おーい!野間?世古もか?早く教室入れー」
授業どころではないのに先生に声を掛けられて俺たちは教室に戻るしかなかった。
漫画みたいに走って去るなんてできなくて、席に戻っていくひなの後ろ姿を見つめる。
「くそっ……」
どうしようもなくて、俺は机に突っ伏した。
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