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「寝てるの?」
言われて跳ね上がる。
ガタンと派手に音を立てて体を起こすと、そこにはジャージ姿のひなが居た。
「え、何で!?」
「こっちのセリフ」
見下されてとにかく頭の中を整理する。
寝てはいなかったが、半分くらい微睡んではいた。
いつの間にか部活中の喧騒も消えていて、静かすぎる教室はやけにドキドキする。
「……世古?」
窺うように話し掛けると、ひなは自分の机の中からノートを出してから振り返った。
あ、忘れ物を取りに来ただけ……俺を探してくれたなんて淡い期待が消えてショックを受ける。
「……あれは…………本気?」
「何、が?」
三列向こうに立ったまま動かないで言われて俺は首を傾げた。
「自分が言ったくせに……」
唇を噛み締めた姿を見て立ち上がると、ひなは逃げるように教室を飛び出す。
「ちょっ!待っ!!」
伸ばした腕はギリギリ届かなかった。
カバンを引っ掴んで急いで追いかける。
邪魔なスリッパは脱ぎ捨てて、階段は手すりを掴んで滑り降りて、残り五段ほどはそのまま勢いよく飛び降りた。
じん、と足の裏が痺れる。
「くっそ…………ひなっ!!」
また走りながら叫ぶと、ひなは少し先でやっと足を止めた。
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