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出口は、檸檬堂を飲みながら俺をじっと見てくる。
「時々見せる生意気なとこや、仕事に対してまじめなとこ、ひねくれてるけど素直なとこ。全部好きなんだけどな。」
だからよー。好き好き、好き好き言ってっけどよー。
「あんたの、その“好き”ってなんなんだよ?」
俺は、食事中にもかかわらず立ち上がってしまった。出口が上手目使いで俺を見る。
「縁くんの恋人になりたい。って、思ってるけどね。」
「俺は嫌だ!」
「なんで?男だから?だったら安心して。僕ゲイだから。」
「男も女も好きじゃないの、俺は!」
頭に血が昇っている。てか、コイツと話してると気持ちが揺れておかしくなって来る。
「付き合うなんて、セックスするための口実だろ?俺は例え一晩中セックスしても誰のことも好きにならない。」
「そうなの?」
「そうだよ!」
「ふーん。」
出口は最後のひと口を口に入れて、檸檬堂を飲み干した。
「シャワー浴びてくる。食器は流しに置いといていいし、歯ブラシは流しに用意してあるから新しいの使っていいよ。ベッドでもソファーでも、好きに使っていいから先に横になってなよ。」
出口が食器を手早く片付けて、風呂に行ってしまった。なんだ?ほろ酔いで泥酔してる酔っ払いはもう寝ろってことか?
食器はそのままでも良いと言われたが片付けた。自分の歯ブラシをバッグから出して歯を磨いた。流石にベッドを借りるのは失礼かと思って、ソファーに横になった。俺の服はひたすら洗濯機で回り続けてる。クソ。泊まることになるなんて。
アルコールも回って、襲ってくる睡魔にも勝てず目を閉じた。
お腹が痛くて目が覚めた。
暗い部屋で、スマホを見ると午前2時だった。深夜に一人前のオムライスと冷たいほろ酔い。食あたりしてもしょうがないか。他人の部屋で下痢なんてなんか申し訳ないのだけど、トイレにしばらく篭らせてもらった。腹の中のものが全て無くなりそうなほどで、こんなことは初めてだ。午後までに治らなかったら病院に行くしかないかもしれない。げんなりしてトイレから出た。
「大丈夫?」
出口が立っていた。
「す、すいません。あの。本当に。」
申し訳ないやら恥ずかしいやらで赤面していく。
「うん。それ、仕方ないことだから。準備させてもらった。」
「え?」
出口は俺を抱え風呂場に押し込んで、俺のスウェットジャージとパンツを剥がした。
「え!?」
「Tシャツ濡れないようにちゃんと持って壁に手ついて」
「は!?」
尻に容赦なくシャワーを当てられた。
「あの!?」
「準備だから。」
「じゅん、び!?」
ボディソープをつけた指が後口を撫でていて、時々滑って中に入ってくる。
「あの、ちょっと!??」
指でそこを広げられているようでいて、シャワーのお湯が中に入ってきているようでもあって。一言で言うなら、気持ちが悪い。
「俺、そんなに尻汚いですか?」
「おもしろいね、縁くん」
別におもしろいこと言ってねーよ。
「よし、これくらいで。」
「え?」
他人に尻を執拗に洗われたのは初めてで何がなんだかまったくわからないし、こんなのとんだ辱めだ!
「試してみようよ。」
俺は、下半身を曝け出したままで恥ずかしくて屈んでTシャツの裾を伸ばして隠した。
「え?」
風呂場から出ようと少しずつ身を動かす。早くパンツを履かせてくれ。
そんな俺の体を出口はヒョイっと横抱きにする。
「あ?え?あの?え?」
俺は、状況がわからず混乱する。
「一晩中、セックスしよう。」
「はあ!!??」
抵抗虚しく、俺はベッドに連れて来られたのだ。
体がコイツに操られているように、どんどん敏感になってくる。襟足に肩にキスされながら、背面からコイツが後口に挿入したソレがイイとこに当たるようにコイツは腰を揺らし俺はもうぐちゃぐちゃになっていて
「ねえ、縁くん。」
耳のそばの音が甘くて背中がゾクゾクする。
「僕のこと、好きになって。」
甘い声に溺れないようにぎゅっと目を瞑ってから出口を睨みつけた。
「嫌だ!」
「なんで?付き合おうよー。」
「嫌だ!あっあっあぁああ」
前に後ろに刺激されながらシーツを掴んで体がガクガク震えるのを耐える。
こんな、…こんなはずじゃなかったのに。
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