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まさか、高校卒業してからボールを追いかけまわすことがあるなんて思ってなかった。
「ほらほら油断してると、またポイント僕がもらっちゃうよ。」
つーか、コイツ。自分が背が高いってこと忘れてるだろ。ドリブルしながら俺の前でニコニコしやがって。
てか、こんなフリーでバスケして遊ぶ屋外の場所があるなんて知らなかった。ボール使い放題とか。部活かよ。
「ねえ、縁くんが勝ったらさ。」
「え?」
「1回でも、僕からポイント取れたら。」
「はい。」
「ただのお客さんに戻って良いよ。」
「え?」
「もう、こんな風に会わない。好きだけど諦めるよ。」
マジか。解放されるのか。何がなんでもボール奪い取ってやる。そして目指すはゴールネット。
「絶対だな?」
「うん。じゃあ、仕切り直しね。縁くんがオフェンスからで良いよ。」
絶対に勝ってやる!体育の成績は良かったんだ。舐めんなよ。
出口からボールを受け取った。3ポイントラインに立つ。目の前の出口がよりデカく見える。壁みたいだ。
「どうした?攻めてこい。」
口角を上げて楽しそうにしている。
「うるせーよ。舐めんな。」
フェイントをかけて切り込んだ。が、簡単についてくる。ゴールが遠い。ディフェンスを抜こうとしても抜けきれない。仕方ないから1歩下がってシュートを打つが止められる。
「ずりぃよ!あんた、でけーじゃん!!」
「ふふ。また、縁くんがオフェンスでいいよ。」
また3ポイントのラインに立つ。
ボールを渡された。
「来い、縁。」
名前を呼び捨てにされて、胸がドクンと音を立てた。記憶の声と重なったから。
「うるっせ!呼び捨てすんな!」
力で向かっていった。押されて、背中から倒れた。
「クソ!!」
手を差し出された。
「ほら、立って。もういっちょ来い。」
その手を握ることはなく、自分で立ち上がった。こんなヤツに縛られっぱなしでたまるか。コイツとはもうセックスしないし、何より、プライベートをコイツと共有するのはもうごめんだ。
「あんたが余裕こいてられんのは今のうちだけだ。俺は体育の成績5の天才だ。」
「へえ。早く見せてよ、その実力。」
「うるせえ!」
フェイクをかけて切り抜ける。だけどすぐに追いつかれる。かわしてもかわしても壁が目の前にやってくる。ゴール下に行けない。ゴール下にさえいければ。
「どうした?天才じゃないのか?」
「だから、あんたがでけーから。」
コイツがでけーから抜けないんじゃない。コイツが上手いから上も下も右も左も隙がないんだ。力で行ったら押されて終わりだ。どうしたら…どうしたらいい。
「あ!」
ボールを奪われて、
「バスケはこうやるんだ。」
腕を伸ばしてジャンプをしたが簡単にシュートを決められた。
「あー!!」
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