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「お前はロビーで寝ろ!!」
ドアを開けて廊下に出され、オートロックの扉は目の前でカチャリと閉まった。
「小田さん、小田さん?」
何度かドアをノックしたけど開けてくれる気配は全くなかった。
…ひどい。
俺は小田さんのこと嫌いじゃなかったのに小田さんは俺のこと嫌いだったんだ。3ヶ月ちょっと。少しずつ距離を縮めた気分になっていたのは俺だけだったんだ。やっぱ俺、誰にも仲良くしてもらえないんだ。
ロビーに行くしかない。
一晩なんとなくロビーでやり過ごすしかない。
エレベーターでロビーに降りた。ボディバッグから財布を取り出して自販機で水を買って飲む。ロビーの白いソファーに座った。落ち着け。ここで一晩過ごすことなんか、なんともない。
それより小田さん、明日になったらいつも通り喋ってくれるかな。すげえ寂しい。あんなに怒ったのはもしかしたら最初に謝らなかったからかな。謝れば良かった。バカだ、俺。
涙が滲んでくる。
自動ドアから、見覚えのある男が入ってくるのが見えた。そう思ったらこちらに近寄ってきた。
「あれ?何してるの?」
「…別に。」
本当は今の状況を話してしまいたい。
「縁くん。別にってことはないよね?」
見上げるとそこにいる出口はいつもと違って少し怒っているようだった。俺は思わず唾を飲み込んだ。出口は俺の横に座った。
「縁くん、困ってるんでしょ?」
顔を覗き込まれた。
「……部屋がない。」
堰を切ったように涙が流れる。
「だと思った。」
「え?」
涙を拭われる。
「縁くん、ガードキー3枚しか持ってなかったよね。」
「俺。ちゃんと部屋、4部屋予約したのに。」
「そっか。うんうん。」
泣いてる俺の頭をポンポンと優しく撫でる。
「部屋、小田さんに相談したの?」
「小田さんとツインになっちゃってて、追い出された。小田さん、たぶん俺のこと嫌いなんだよ。だから、追い出したんだ。」
「それは…かわいそうだったね。」
肩を抱き寄せられた。
「僕の部屋においで。」
俺は反射的に体を離した。
「は?」
「行くとこないんでしょ?」
出口は当たり前のような顔をしている。
「こ、ここにいる!」
「それはホテルの人に迷惑だよ。」
確かにそうだけど。とはいえ、コイツと2人きりになるのは危険。
「だって、あんた!」
「ん?」
「す、するだろ?」
出口がニコッと笑う。
「縁くんがしたいならしてもいいよ。」
「したいわけない!」
俺は、思わず立ち上がった。
「何もしないから。一緒においで。」
うそを言ってるようには見えない。
「…本当?」
出口が、頷いた。
「信じて良いよ。約束する。」
「絶対だよ?」
「もちろん。」
だから、俺は出口の部屋に来た。
なのに、なのに
「…っふ。んっ。ん。」
絡まる舌に頭が痺れる。
ボクサーパンツの中には、出口の手が入っていて、俺の大きくなってしまったソレを優しく弄る。
「縁くん、その顔エロいね。」
顔を離した出口がたまらない顔をしていて俺は自分がどんな顔をしているかはわからないけど、虚ろな目をしているんだろうと思う。
「下もトロトロしてる。」
先端をキュッと押されて体が跳ねる。
「…んあぁ!」
そんなことしたら、アレが出ちゃうからやめてほしい。てか、出したくてたまらない。我慢しないと。
「イきそう?」
出口を睨みつけた。
「そんな怖い顔しないでよ。素直に気持ちよくなりなって。」
出口は余裕で笑ってる。
俺は悲しくて堪らない。
「約束したのに。」
涙が滲んでくる。
「縁くん?」
出口が目の下を指で触れる。涙が流れて止まらなくなる。
「ひどい」
「ん?」
出口のその顔を睨みつけた。
「本当に好きならこんなひどいことしないでよ。」
震える声で訴えた。
「大っ嫌いだ!!」
俺はコイツを信じてしまったことも約束を破られたことも、悲しくて悔しくて。
自分もコイツも許せなかった。
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