⑩仲直りデート!?

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車は福島西インターから東北道に乗った。 「縁くんはさ。」 「え?」 「なんか好きな音楽とかあるの?」 最近聞いた音楽を思い出す。うちの番組のテーマソングだった。 「……ない。」 「そかー。僕、サンボマスター好きなんだー。」 「へー。」 全く興味がわかない。コイツがどんな音楽が好きだろうが俺には関係ない。 「えー、ちょっと。理由とか聞いてよ。」 …めんどくせ。でも、聞かなきゃ聞かないでずっと言ってきそうだし。 「……なんでですか?」 「うん、恥ずかしいんだけどね。電車男ってドラマがあって。」 「………知らね。」 電車マニアのドラマか?ずっと、キハ70だとか、パンタグラフがどうのこうのとかドクターイエローとか、そんなことばっか言ってる…、そんなドラマか? 「ちょうど2チャンが流行り出した頃のドラマでね。ストーリーは割愛するけど、ものすごい純愛で。」 …余計興味ない。なんだ恋愛ドラマか。 「なんか、叶えたい恋ってキュンキュンしない?」 「しない。」 「そうなの?」 「全然興味ない。どうせドラマなんて上手くいくんだろ」 「ま、そうだけど。」 出口はまっすぐ前を見ている。 東北道はトンネルが多いからワンセグが固まる。 「立木家の四男は女みたいだ。」 「…ん?」 俺は、今まで言われた、俺の外見の感想を口にだした。 「立木家の四男は、線も細いし体も小さい、きっと嫁は取れないだろう。いっそ女に生まれた方がまだ貰い手もあったかもしれない。」 「ん?何、それ?」 思い出すごとに、 「縁ちゃんは、顔が可愛過ぎて女の子みたいだから付き合う対象じゃないよー。」 「へー。」 ムカついてくる。 「みんな外見しか見てない。俺の顔が女みたいなのは俺のせいじゃない。背が小さいのも痩せ型なのも。」 サイドミラーに映る自分の顔に舌打ちした。 「俺は、受け入れてもらえない。好意を持つのがどんなに無駄か知ってる。」 こんな顔じゃなければ。まだ違ったかもしれない。 「僕は好きなんだよなー。」 出口の発する声が能天気に聞こえた。 「いっそ、僕のお嫁さんになれば良いのに。」 その声に思わず出口を見た。 「は?」 「全部解決じゃん?」 左にウインカーを出してインターチェンジに降りていく。 「わけわかんな。」 「そのうちわかるよ。縁くんは僕を好きになる。」 出口は余裕そうにそう言った。 「俺は、あんたのこと好きになんかなんないから。」 俺は意地でも恋愛なんかしない。そんな意志を込めて言い放った。 出口は、ふふふと笑いながら車をゆっくり減速する。ETCのレーンに入って高速を降り郡山市街地へ向かう。 一般道に入り郡山駅を目指した。
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