プロローグ

2/6
前へ
/192ページ
次へ
 少年、藤崎龍二はスーパーまで走らせていた。タイムセール開始まで残り十分。それまでに到着し、親に頼まれたセールを買わなければならない。  普段ならばやる気の起きないおつかいだが、先日の通知表があまり人に見せられない評価だった為、逆らうことができない。 「鯵と卵がセール品ね。それは絶対に買ってきてちょうだい。あと油揚げと油揚げと油揚げを買ってきて」 「油揚げばっかじゃねーか」  出発前に頼まれた品に小言を言うと、飯を油揚げ炊き込みご飯だけにすると言われた。おそらく頼まれた品すべて買ってもその献立だけは作りそうだ。  タイムセールに間に合うために、自転車のギアを一段階重くする。いま走っている大通りは、人通りも少ない道だった。多少速度をあげても問題ないだろう。そう思った矢先、五メートル先に誰かが飛び出してきた。 「うおおおおおおお!!」  藤崎は思わず叫ぶ。後輪ブレーキをいち早く、直後に前輪ブレーキもあわせて強く握りしめた。  自転車の向きを曲げる事で、辛うじて飛び出してきた少女と衝突することを避けた。危うく加害者になるところだった自分を棚に上げ、突然飛び出してくるとは何事かと少女を睨みつけた。少女は怯え顔でこちらを見ていた。 「た、助けて!!」  少女が訴えてくる。その言葉に藤崎は眉をひそめた。何事かと尋ねるより先に、大きな影が雑木林から飛び出してくる。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加