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精いっぱいの睨みを受けた男は目を丸くした。その直後大男は爆笑し、そのまま藤崎に笑みを返した。
「ほう、勇敢だな。ガキンチョ。恐らくお前とコイツは初対面だろう。だが、コイツが俺に襲われそうな事を理解し、道徳的にそれが良くない事だと判断した。その勇敢さは認めてやるよ」
男は右腕を大きく振り上げる。
「だがそれは勇敢ではなく無謀と呼ぶんだぜ」
藤崎は少女を押し退ける。
少女が離れた時、男が少女を目で追うと予想し、不意打ちの隙を伺う為に懐へ入ろうとした。しかし、男の視線は少女へ移らず、藤崎をじっと見て右腕をおろした。
気が付いた藤崎は間一髪よけ、次発を自転車を盾にすることで防ごうとするが、その自転車の籠とハンドルが、男の拳によってへし折られてしまった。
スクラップになった自転車に驚愕し、一瞬固まった藤崎の隙を見逃さず、大男は左腕で彼を殴った。軟弱な藤崎はそれを受け止める事も流す事も出来ず、道路脇まで吹き飛ばされてしまった。
「そんなものかよ。期待外れも期待外れだな」
大男は落胆しながら藤崎へ歩み寄る。
起き上がるのがやっとで、反撃はできそうにない。
人に殴られて身体が吹き飛ぶ経験をするとは思わなかったが、それでもあの一撃を受けて立ってられる自分を褒めてやりたいと考えていた。
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