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女子供に暴力を振るう趣味はしていないんだがな、と呟きながら、男はズボンのポケットに手を伸ばす。ガサゴソとして何かを取り出し、それを指にはめた。
それがメリケンサックだと藤崎がわかったのは、きっと先日知り合いから借りたヤンキー漫画に描かれていたからだろう。
「お前は例外だ。短い生涯で残念だが、恨まないでくれよ」
告げる男に謝罪の意が込められていなかった。
メリケンサックを指に嵌め音を鳴らす。
かちん、かちんと音を立てながら、大男はゆっくりと近づいてきた。
意外に心は恐怖に支配されていなかった。それ以上に殺されてたまるかという反抗心と、やはりこんな男に少女を渡すわけにはいかないという気持ちが藤崎を支えてくれていた。
残る力を振り絞り立ち上がった藤崎だったが、男に勝つ術は何も思いつかない。せめて男の腕がこちらに届かない程度にリーチがある武器があったりすれば、勝てるのだろうか。
自分にそんな力があれば、後ろで震えている少女を護る事ができるかもしれない。
なんとしてでも、彼女を護らねば。そう強く願ったとき、藤崎の右手に刀が現れた。
「これ、は」
「何もないところから刀を出した、だと?」
大男の様子が、先ほどまでの挑発的な態度から一変し、焦燥感が見える。男にとってはこの予想外の出来事が気に食わないようだった。
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