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「持ち物は特になし。子を探している情報がないか、近隣の人にも聞いたけど、今のところ特にそういった声はないらしいの」
母にそう言われ、藤崎は昨日の彼女の容姿を思い出す。
確かに彼女は手ぶらのように見えた。何も持たずに何をしていたのだろうか。実は家出途中だったとか……そうなると、彼女を追いかけていた大男は何者だったのだろうか。
思案に暮れている藤崎に母親が説明を続けた。
「今、病院の人とお巡りさんが取り調べしているけど、一向に口をきいてくれないようだわ」
考えこむ。あの少女は何を腹に抱え、大男から逃げていたのだろう。
母は両手を一度だけ叩き、藤崎に告げる。
「というわけで、あんたの出番ってわけ」
「……どういうわけ?母さんじゃ駄目なのか?」
「聞けるなら私でも良いけど、私も大人だから信用してくれるかわからないからなぁ。その点、あんたはあの子と年齢も離れていなさそうだし、助けてあげたんだから、多少は話を聞いてくれるんじゃない?」
「そういうものだろうか」
疑念を抱いていると、少女が戻ってきた。彼女は居合わせていた藤崎と母に一度お辞儀をして、ベッドに座り込んだ。
「じゃ、あとよろしく」
母親はそう告げると、病室から出て行ってしまった。任されてしまったわけだが、どうしたものかと藤崎は頬を指でかく。
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