俺以外Tueeee世界でチート転生者を理系知識でわからせろ!!~In The Court Of The sky King~

12/32
前へ
/32ページ
次へ
「カーラ様!! カーラ様!! カーラ様!! カーラ様!!」  相変わらず、広場の方から、女王を呼ぶ民衆の声が響く。  王宮のバルコニーから広場が見渡せる造りになっている。  材質からして、この王宮が建てられたのは、だいぶ昔だろう。  この王宮を建てた王の代から、民衆としっかりと接点を持ち、民衆と向き合ってきた。  だからこそ、支持されてきたとわかる。  女王と付き人二人がバルコニーへ出て民衆に語りかける。  それを僕と紫炎は室内から見守っていた。 「どういうつもりだ? 」  僕は紫炎に言う。 「どういうつもりって、可愛いマコトちゃんを皆にみてもらいたいだけだけど? 」 「みんなに……見てもらう」  僕はゾッとした表情で紫炎を見た。 「しまった!!!!」  紫炎が頭を抱える。 「皆に可愛い姿を見せたら独り占めできない!!!!」  こいつは何を言ってるんだ……  そんなやり取りをしているうちに、外から民衆の大きな歓声が聞こえる。 「さぁ、出てこい」  サムがこちらに声をかける。  僕は命乞いをするような目で紫炎を見つめる。  紫炎の目は「ダ~メ」って言ってるようだ。  腕を掴まれ、バルコニーに出る。 「あれが転生者様か!!」 「魔王を倒した英雄だ!!」  庭一面に集まった民衆が僕を見ている。  魔法少女の格好をした僕を見ている。 「ありがと~」  隣では、紫炎が笑顔で手を振る。 「ほら、もっと前に出て」  紫炎が僕の手を引く。 「いや、下に人居るから、見えちゃうから」 「スカートの中ならパニエで隠れるから平気だって」  紫炎に思いっきり引っ張られる。  僕は身体を固まらせ目をぐるぐるさせるので精一杯だった。 「あれ、マジカル・メニナだ!!」 「本当だ!!」 「メニナちゃんだ!!」  民衆が騒ぎ出した。 「ちょっと、呼ばれてるよ」  紫炎が言う。 「え? 」 「だから、呼ばれてるって」 「どういうこと」 「メニナちゃんって君のコスプレしてる魔法少女の名前だよ」 「そうなの!? 」 「ほら、手を振って!!」  紫炎は僕の手を掴み、民衆に向けて振った。 「メニナちゃぁああああああん!!!!!!」  身体全体に歓声を浴びる。 「あれやってー!!」 「そうだね、私も見たーい!!」 「メニナちゃん!! あれやってー!!」  民衆が何か言い始めた。 「あれって何? 」  紫炎に聞く。 「あぁ、『マジカル、マジカル、きゅるるるる~ん、みんな元気にな~れっ!!』の事かな? 」  紫炎は真顔で言う。  それをこの場でやれというのですか?  僕は涙目で紫炎を見た。  その目に気付いた紫炎は民衆の一部を指さす。 「ねぇ、あそこを見てごらん」  そこには、小さい女の子たちが不安そうな顔でこちらを見つめていた。  こうなったら、もうヤケになるしかない。 「ま、マジカル、マジカル、きゅるるるる~ん、み、みんな元気にな~れっ!!」 「うぉおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」 「かわいいよ~、メニナたん!!」 「メーニーナッ!! メーニーナッ!! メーニーナッ!! メーニーナッ!!」  もう、いっそのこと殺してくれ。  異世界には娯楽がないため、彼らには創作に対しての耐性がない。  話の殆どが神話であり現実とリンクしている。  そして、科学も発達していないし魔法も存在している訳だ。  ハッキリと言えば『現実と創作の区別がついていない』  僕が本物のメニナだと思い込んでいるのだろう……  式典の後、女王は、恥じらう僕の姿を見て察したのか男性用の服をサムに用意させた。  サムの能力だろうか?  空中に絹糸を浮かせ、それを凄い速さで織りこみ、あっという間に服を仕立て上げた。 「サイズが合えば良いのだが……」 「ありがと」  サムは僕に服を渡す。 「え~!! なんてことするの!!」  隣で紫炎がぶつくさ言ってるが聞かないようにする…… 「あの、服まで用意していただいて申し訳ないのですが、僕はこの国で戦うつもりはありません」  僕は女王に言う。 「その様子を見たら、わかりますよ。 あんな手を使って連れてきてしまい申し訳ございませんでした」  女王は頭を下げた。 「他の国から取られるよりもマシだと考えての判断です。 戦う意思のない者を無理やり戦わせても意味がありませんから」  なるほど、僕が他の国からスカウトしにくくするための手段か……  やはり各国は他の国に転生者を取られたくないのだろう…… 「お詫びとして、次に住む場所が見つかるまで、この王宮の一室を利用してください」 「監視も込めてでしょうか? 」 「その通りです」  僕の皮肉に女王が笑った。  それからの事。  ある日には、誰かさんに服を隠されて、王宮をドレスで走り回り服を探し出す。  紫炎はそれを見て、喜ぶ。  ある日は、隠される事を予想して、代わりの服を用意して、平然と食卓に出る。  紫炎は悔しそうな顔でスープを飲んでいた。  ある日には、その仕返しとして、下着が全て女性の物にすり替えられていた。  一日中、紫炎のニターっとした視線を感じながら過ごすことになった。  そんな毎日を過ごしているうちに、ノーズウェルに来てから三カ月が経つ頃。  日常は急に壊される。 「あぁああああ、かわいすぎるぅ!!」  今日は、僕の負けのようだ。  食事中なのにも関わらず、紫炎は僕の頭を思いっきり撫でた。  今日の服装は、ピンクのドレスに黒のニーソ、長い金のウィッグだ。  反応したら負けだ、食事の並んだ机の前に座りスープを飲む。 「はしたない」 「私は悪くないと思います」  怒るアトラクを女王がなだめる。 「しかし、食事中なのにも関わらず椅子から立ち上がるだなんて」  アトラクが不満そうにする、その中。 「女王陛下!!」  食事中、一人の兵士が走り込んできた。 「そんな、急いでどうしたのですか? 」  女王はちぎりかけのパンを皿に戻した。 「セプタテラから敵襲です!! 数、5万、北東の方角からです!!」  さっきまで怒っていたアトラクも含めた全員で机から立ち上がり、バルコニーに向かう。  山の方から、チカチカと光が見える。  鏡に太陽光を反射させる事によって、遠い距離で連絡を取り合っているみたいだ。 「まず、現場の国民の避難を!!」 「了解いたしました!!」  女王が兵士に指示を出す。 「あまりに急だ、巻き込まれた人も居るかもしれない……」  後ろでサムがつぶやく。  気分が悪くなってきた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加