親友に騙された!

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 2ヶ月後、休日で賑わう駅前の繁華街で、久しぶりに〔彼〕の姿を見かけた。見慣れたスーツ姿と違ってラフな格好だ。新鮮な光景に思わず後ろ髪を引かれそうになる。ところが次の瞬間、信じられないシーンを目撃する。親友として〔彼〕とのキューピットになってくれていたとばかり思っていた彩佳が、こともあろうか、〔彼〕と腕を組んで歩いているのだ。明らかに、デートの真っ最中である。ふたりはピッタリと寄り添っている。どうも映画館から出てきた様子だ。いま人気の話題作を鑑賞していたのだろう。茫然としながらふたりを追い続けると、まだ昼間だというのに、早々(そうそう)ときらびやかな建物へと消えていった。  「だまされた!」  宏子の絶叫が駅前に響きわたる。我を忘れた宏子は、先ほどふたりが入っていった建物まで足を運ぶと、その出入り口で彼らを待ち伏せした。ひとりで立ち入るには不自然なエリアだけに、通行人は宏子を奇異な目で見る。しかし本人はお構いなしだ。  およそ2時間後、幸せそうに肩を寄せあいながら、ふたりが建物から出てきた。宏子はとっさにふたりの前に立ちはだかった。そして、驚いて立ち退くようなしぐさをみせた彩佳の胸ぐらをつかんで再び奇声を上げる。  「だましたな!」  平和な休日の繁華街に修羅場が訪れようとしていた。
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