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優しい物音
私はベッドの中にいる。
頭が痛い。
起き上がりたくない。
キッチンで千早君が朝食を作ってる。
たぶん、トーストと目玉焼きとサラダ、コーンスープ、カフェオレにヨーグルト。
はたから見たら絵に描いたような恋人達の幸せな時間。だけど。
寝返りを打って、私は考える。
どうしたらいいんだろ。
ああ、もう。
自分の心がわからない。
外はいい天気で、カーテンがそよそよと揺れて、彼の鼻歌が聞こえる。食器を運ぶ音。ふわりと漂う、美味しそうなにおい。
「せんせ……じゃなかった、奈津さん。
朝ごはんできたよ」
教え子だった彼が、数年後こうして私の部屋にいるなんて、思ってもみなかった。
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