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これから
テーブルに並べられた、私の理想の朝食。
「天気いいですね、今日」
向かいには微笑む千早君。
「僕、今日一日空いてるんです。
水族館でも出かけません?
あ、もし奈津さんがよかったら、ですけど」
「えと……私」
瞬間、頭に痛みが走って、私は顔をしかめる。
「大丈夫ですか?」
「うん……ちょっとズキッとしただけ」
「無理しないでくださいね。
ごはん、温かいうちにどうぞ」
いただきます、と千早君は食べ始める。
私、本当に二日酔いなんだろうか。
本能が警告を発した、なんてこと、ないだろうか。
たぶん千早君は私のために自分を変えている。それだけ考えると怖いけど、根本には私への愛がある。
推しの姿になり、運命の再会を装い、デートを仕込み、つぶやいた通りの朝食を作る。
これは「私の事考えてやってくれたのね!」と感激する許容範囲内なんだろうか。
答えが出せない。
私は朝食を見下ろし、ごくりと唾を飲み込んだ。
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