これから

1/1
前へ
/16ページ
次へ

これから

 テーブルに並べられた、私の理想の朝食。 「天気いいですね、今日」    向かいには微笑む千早君。 「僕、今日一日空いてるんです。  水族館でも出かけません?  あ、もし奈津さんがよかったら、ですけど」 「えと……私」  瞬間、頭に痛みが走って、私は顔をしかめる。 「大丈夫ですか?」 「うん……ちょっとズキッとしただけ」 「無理しないでくださいね。  ごはん、温かいうちにどうぞ」  いただきます、と千早君は食べ始める。  私、本当に二日酔いなんだろうか。  本能が警告を発した、なんてこと、ないだろうか。    たぶん千早君は私のために自分を変えている。それだけ考えると怖いけど、根本には私への愛がある。  推しの姿になり、運命の再会を装い、デートを仕込み、つぶやいた通りの朝食を作る。  これは「私の事考えてやってくれたのね!」と感激する許容範囲内なんだろうか。  答えが出せない。  私は朝食を見下ろし、ごくりと唾を飲み込んだ。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加