告白

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告白

「先生、好きです!  付き合ってください!」  目の前の少年――千早薫(ちはやかおる)君は一気に言った。  長めの前髪、眼鏡、猫背で地味な男子。  ありったけの勇気をふりしぼって告白したんだろう。返事を待つ目が潤んでいる。  またかぁ。  私は溜息をつく。  男子高校の先生になって、この手の告白には慣れっこだ。対応はいつも同じ。 「ごめんなさい千早君。  私、君のことは生徒としてしか見れない」 「じゃ、じゃあ卒業したら……」  千早君はすがるような目でこっちを見ている。  下手なことを言うと希望を持ってしまうかもしれない。  ので、切り札を出す。 「私、彼氏いるの。来年結婚すると思う」 「えっ……」    驚いたものの、 「……もしその人と別れたら」  千早君はめげなかった。 「それはないかな」  まっすぐな想いを受けとめきれず、私は視線をそらす。 「千早君、勘違いしてるのよ」 「勘違い?」 「世の中に出れば、魅力的な若い女の子はたくさんいるんだから」 「そんな、一時の気の迷いじゃないです!  先生は僕にいつも親切で、可愛くて、笑顔が素敵で……こんな気持ちはじめてなんです!  僕、がんばって先生にふさわしい人になりますから……だから……」  確かに私は千早君に丁寧に指導してきた。でも、それは彼が職員室に来て熱心に質問してきたからだ。  打てば響くように成績も上がってきて、教師としてやりがいを感じさせてもらった。  だけど、それとこれとは別だ。 「褒めてくれて嬉しいけど、本当にごめんね。  私は誰にでも優しく指導するし、笑顔も振りまくよ。  だって仕事だもの」 「仕事……」  今度こそ、千早君はショックを受けていた。 「今日のことは忘れて。またいつでも質問しに来てね」 「あ……」  なおも何か言おうとする彼を残し、私はその場を去った。
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