再会

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再会

「やだなぁ先生、僕ですよ僕、覚えてません?  千早薫です」 「千早……君?」  そう言われても信じられないくらいに。  目の前の彼はジアン君そっくりだった。  長い黒髪は茶髪になり、アシンメトリーの洒落(しゃれ)た髪型に。コンタクトにしたのか眼鏡もない。  何より昔の彼は、こんなに堂々としてなかった。  そういえば私、彼のこと振ったんだっけ……。 「先生、どうしました?」  千早君は手を放し、私の顔をのぞきこむ。 「えと、ごめんね……好きなアイドルに似てて」  私は傘を持ち直し「先生の顔」に戻る。 「え、もしかして先生も?」 「もって、何」 「僕、ジアン君のファンなんです!」  それは雨降る夜でもまぶしい笑顔だった。  そうなんだ、と答えながら顔が赤くなるのがわかる。  何考えてるの、私。  彼は元教え子なのに。   「えと……じゃあ、私はこれで」 「そうですか。暗いので気をつけてくださいね。じゃ」    彼は会釈して、あっさり去っていった。  あの告白から何年経っただろう。背も伸びていたし、何よりあの顔。危うく妄想が広がりそうで。 「いや……ないない」  声に出してつぶやき、ようやく帰路につく。    偶然の再会。  彼とはそれきりのはずだった。
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