再会

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 数日後、残業帰りの私はスーパーにいた。パスタソースを見ていると突然声をかけられた。 「桜井先生?」 「はい」  学校みたいに反射的に答えて、振り返ると推しがいた。 「奇遇ですね」  たっぷり十秒はフリーズしたと思う。  スーパーの中に、推し。  非現実的な光景に足元がぐらり、と揺れる感じがあった。 「なんでいるの?」 「バイト先が近いんですよ。先生は?」 「近所に住んでて」 「ホントですか?   なんか運命ですね!」  ぱっ、と人懐っこい笑みが浮かぶ。  まぶしくて直視できない。   「そんな、運命なんてこんな年上に言うもんじゃないわよ。  もっと若くて可愛い子に言いなさい」  つい冷たい口調で言った、その時。 「先生は今でも可愛いですよ」  すぐそばで、千早君の声がした。 「な……」  耳元でささやかれた、とわかった時には「それじゃ」と彼はもうレジに向かっていた。  私は耳を押さえた。熱い。  頭の中に「今でも可愛いですよ」という彼の声が残っていた。  それからスーパーも帰り道も、通るたびに彼を思い出すようになった。  私、彼のこと好きなんだろうか。
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