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感染者が減って、ようやくまともに買い物できるようになった休日の夕方。
私は戦利品を手に、うきうきした気分で最寄り駅に着いた。
壁にもたれてる人に見覚えあるな、と思ったら千早君だった。真剣な顔でスマホをいじっている。
私の中にイタズラ心がむくむくと沸き起こる。
いつも不意打ちで現れてペースを乱されるから、今日は私から声をかけちゃおう。
「千早君!」
彼はビクッとして、スマホから顔を上げた。
「先生」
「びっくりした?」
「はい……」と目を瞬かせて彼は笑う。
「今日もバイト?」
「はい、帰るところで……ああ、ちょうどよかった。
先生、同窓会来ませんか」
「同窓会?」
久しぶりに聞くワードだった。ここ数年、その手の集まりは中止が続いている。
「今ちょうどLINEで話してたんです。感染も落ち着いてきたし、地元にいるメンバーで集まろうかって……4、5人だし、よかったら」
「ええ、どうしよう……」
「ここに予約入れたんですよ。
港通りに新しくできたお店」
彼はスマホの画面を差し出す。
「えっ、あそこ? よく予約取れたね」
テレビで見かけて、アカウントをフォローしていた人気のイタリアンのお店。ルミとも「そのうち行きたいねー」と話していたのだ。
「でも、そういう場に先生がいたら嫌じゃない?」
「全然! 桜井先生なら皆大歓迎ですよ」
「そう?」
千早君が力を込めて言ってくれたのが嬉しかった。
LINEを交換して、その場は別れた。
カレンダーアプリに「同窓会」と入れるとテンションが上がり、三浦先生からも「なにかいいことあった?」と聞かれる始末だった。
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