雨の声

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【場面転換】 ▼:「あーあ、せめて星が見える夜が良かったな。」 〇:「どうして?」 ▼:「…その時になったら分かるよ。」 〇:思い出した。 〇:そう言って、彼は帰っていったのだ。 〇:そして、その日の夜。 〇:雨が降って、いつものように雨の声を聴いた。 〇:だけど、聴こえる声はいつもと少し違っていた。 〇:私は気になって、外に出た。 【場面転換】 〇:「そうだ…。」 ■:「何か思い出せましたか?」 〇:「えぇ…あの日。彼と最後に話した日。」 ■:「はい。」 〇:「私はいつものように雨の声を聴いていました。」 〇:「だけど、少し違っていたんです。」 ■:「違う?」 〇:「えぇ。その日は…。」 〇:「雨と一緒に、星が降っていたんです。」 ■:「雨と星…。」 〇:「雨の声に混じって、星の声が聴こえていたんです。」 ■:「混じるなんて…。」 〇:「おかしいですよね…。」 〇:「でも、聴こえたんです。あの人の声が」 ■:「このかけらの…」 〇:「…どうして、ずっと忘れていたんだろう。」 ■:「きっと、忘れていたわけじゃないですよ。」 〇:「え?」 ■:「前に言ったでしょう?このかけらと一緒に伝えられてきた話があると。」 〇:「えぇ。」 ■:「このかけらは、昔、光を司る家系の最後の者がこの世界を守るために大きな力を使って平和をもたらした。」 ■:「そして、星が降り注いだと。」 〇:「…。」 〇:「世界を、守る?」 ■:「はい。世界は、断続的に雨が降り続いたそうです。それにより、各地で洪水が発生しました。田畑が水に浸かり、作物が採れず、飢えて亡くなる者も少なくなかったそうです。」 〇:「そんなことが…」 ■:「日照りが続く事はあれど、雨が降り続く事は異常だと思った人々は、神に助けを求めました。そこで先だって行動を起こしたのが、光を司る『星の一族』つまり、僕の先祖です。」 〇:「あなたは、何が(言いたいのですか)」 ■:「(さえぎって)もう、お気付きなのではないですか?あなたは、雨を司る神だという事を」 〇:「私が…神?」 ■:「あなたは、泣沢女神(ナキサワメノカミ)」 ■:「イザナミの死を悲しむイザナギの涙から生まれた神様です。」 〇:「私が神様なんて…」 ■:「精霊があなたの周りを飛び回っていたのもこれで説明がつきます。」 〇:「違う…違うわ。私は神様なんかじゃない。」 ■:「では、何故毎日僕がこの場所に通っていたか知っていたんですか?」 ■:「あなたは雨の日にしか現れないのに」 〇:「やめてください…」 ■:「雨の日にしか実体化出来ないだけで、常に存在しているからではないですか?なぜならあなたは水の神。空気中にも水は含まれている。」 〇:「やめて!」 ■:「…すみません…問い詰めるつもりはありませんでした。」 〇:「…いえ。」 ■:「……」 〇:「……」 雨は、降り続く。 〇:「恐らく…」 ■:「え?」 〇:「恐らく、あなたの言う通りなんだと思います。」 〇:「あなたの問いかけに対して、私は人間であると自信を持って答える事が出来ません。」 ■:「……」 〇:「そもそも、雨の声が聴こえるなんて普通、人間では出来ない事ですしね。」 ■:「そう、ですね。」 〇:「教えてくれて、ありがとう。」 ■:「…いえ。」 ■:「…帰ります。」 〇:「そうですか。気をつけて。」 ■:僕は、どうしたら良いのだろう ■:どう、したいのだろう ■:雨の日に出逢ったあの人 ■:あの人は、人ではなかった。 ■:僕は…僕は……… ○:夢の中の彼のこと… 〇:自分のこと… 〇:何も分からないから知りたかった。 〇:でも、知った事実は想像していたものとは違った。 〇:いいや…分かっていたはずなのに見て見ぬふりをしてきた。 〇:もう、それは出来ない。 ■:あの時の彼女の顔が忘れられない… ■:知りたいと言っていたけど ■:本当はどうだったんだろうと思ってしまう。 ■:僕のしたことは… 〇:最近はずっと雨… 〇:原因は自分だと分かっている。 〇:でも、どうすることも出来ない。 〇:だから、私はここにいるのだろうか。
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