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「どうしてそんなに自信ないんですか」
声に出しても居ないのに、見透かしたような言葉に息が詰まる。
「何が」
「バレバレですよ、これだけ一緒にいたら。まぁ、私もバレバレでしょうけど」
繋いだ右手は、じっとりと汗をかいている。自分の右手なのか、ナツの左手なのか。わからないぐらいにびしょびしょだ。
「じゃあ、私の毎朝のルーチンを先輩にお伝えします」
話の流れをぶった切るような提案に、ぽかんとすればナツは目線を逸らしてまだ続ける。
「起きてシャワーを浴びて、ご飯を食べて。まぁ、ここどうでもいいんですけど」
「じゃあ大事なとこから言えよ」
「出かける前に、先輩のこと思いながら香水を首と手首に塗るんですよ」
「そう」
答え方がわからない。俺の求めてる答えだと思っていいって事?
「先輩がこの匂いを嗅いだら私を思い出すようになっちゃえ。とか、先輩ともし離れても、この匂いで覚えててくれとか」
「俺の香水と一緒だな」
意識せずに出た言葉に、ナツの目がどんどん丸く大きくなっていく。
「どうしてそう言うことは言えちゃうかなぁ」
「なに」
「付き合いませんか、先輩。わかってるくせに、理解してないみたいなんで待ちません」
軽いリップ音と柔らかい温もりと、甘い香りに溺れた。
<了>
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