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新緑の芽吹く日
――その人は、いつもさわやかな春の匂いがした。
何気なくサークル部屋の机に頬杖をついて、先輩を眺める。私の視線に気づいた先輩が、目の前に座った。先輩はいつものように人相の悪い顔で、それでいて春のように暖かい。
先輩と目が合った刹那、私の胸にはさわやかな春の匂いがいっぱいに広がる。
「なに?」
不快そうにへの字に曲げられた唇。シワの寄った眉間。不意に、私の髪に触れる指先から香る青々しい草木の匂い。
「先輩っていつも、春の匂いがしますよね」
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