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俺はカリンのアパートで暮らすことになった。それ以外は何も違いはなく、普通に会社にも行っている。
いや、違いはあるか。今は俺の首には、細いチョーカーが巻かれている。カリンの首に巻かれているものとよく似ているが、俺の方にはごつい留め具がついていて、鍵がないと開けられない形をしている。鍵を持っているのは当然、カリンだ。
当然会社の連中は不審がるが、俺はなんとか誤魔化しおおせている。そうして変わりばえのしない日中の仕事を終えると、俺はカリンが待っているアパートに帰るのだ。
おかしいじゃないかって? 逃げないのかって?
それには、いくつか理由がある。
まず、チョーカーの鍵。カリンがその鍵を持っている限り、自力では外すことはできそうもない。
それから、逃げ出した場合何が起きるか。このカリンのことだから、もし俺が逃げ出したりでもしようもんなら、どんな復讐に出るか分かったもんじゃない。
「もし、あたしの前からいなくなったら……分かるよね」
今は自分の首から提げている、俺のチョーカーの鍵を指先で弄びながら、カリンはそう、俺の耳元で囁くのだ。
分かると言われても分からんが、これはとびっきりの復讐を用意しているという意味なのだろう。あるいは、このチョーカーに毒針が仕込まれていて、カリンがボタンを押せば俺はこの世からおさらばするのか。あるいは爆発か。
そうして、最後の理由だ。
カリンはこれで、案外かわいいところがなくもない。俺が従順にしていれば奇妙な真似に出ることはないし、家に帰れば手料理を作って待っている。不幸にして味覚が死んでいて、すぐにデスソースを使いたがるところは玉に瑕だが。
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