恋は百合のフレーバー

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恋は百合のフレーバー

バレンタインデーを一方通行に規制したのは身勝手な大人の思惑だ。本来ならば恋人候補が互いに友達以上の関係をプレゼントを通じて確認する行事だ。それをチョコレートメーカーの都合で歪められてしまった。それも日本だけの風習だと聞く。欧米では告白の儀式として機能している。 私こと金沢由衣が恐怖を感じているのはまさしくその点だ。意中の人は2年生の山本忠弥。文武両道の美男子で話し上手。 普通は聞き上手が女子にもてる。しかし女同士が話題につまると罵倒合戦になる。 陰口や悪口は自分のアイデンティティーを引き立てる道具になるが多用するとネガティブなオーラを放つ。 忠弥はそんなギスギスした女の空間に風のようにあらわれる。そして空気のように自然に馴染んでる男だった。 ある時、私が呪術を見てみたいと冗談めかしているといじめっ子の畑中凪咲が負の感情を爆発させた。 全てが詰まった日でした。野薔薇ちゃん、真希さんの戦闘シーンは魔力が全開、 加えて”家柄”と”性別”に関する背景を交えた陰謀。この24分間全てが見所の素晴らしい決着をつけようという話になった。 このままではクラスの誰かが殺されてしまう。 私は私が今、この時間に殺り損ねたら、世界にとって、私の思い描いた女の子たちにとっても大打撃になる。このままではその女の子たちが殺されてしまう。私が死なないために何かしてあげたい。女の子たちにはそう伝えたが、この時はまだ伝えたことに気づいていなかった。 私の復讐心に火が付いた。 「この世界で何をすべきか お前は正しいか?」 そう問うてるうちに復讐心の火は消えた。そして彼女の顔を見ながらまた問いに返す。でも、私は知ってる。心のままに生きてきた彼女を止めることはできない。 彼女を止むに止まれない。だから私は彼女を止めなければならない。自分の意思でなく彼女が何もしないでいるからこそ自分の意志で。 私は覚悟を決めた。ここからは1人でやるんだ。 そう怖気づいてしまった自分に言い聞かせる。でも体が震えて動けない。どうしよう。その時、後ろから声が聞こえた。 「期待外れ。私より弱い」 そこには白髪の少女がいた。ムカつくけど敵じゃない。心強い。 「助っ人ありがとう」 彼女は笑った。 「何言ってんの? 仲間じゃん」 「私は月山真希。あなたのことは野薔薇ちゃんから聞いてるよ。よろしくね。」 「こちらこそ、改めて私は金沢由衣です。よろしくお願いします。」 真希ちゃんは私に挨拶を済ませるとすぐに行動を開始した。 まずは、里香ちゃんに呼びかける。 「里香ちゃん、聞こえる?」 『どうしたの?』 里香ちゃんが答える。 「今から私たちと一緒に戦って欲しいんだけどいいかな?」 『いいよ!』 里香ちゃんの返事が帰ってくると同時に里香ちゃんと繋がっている感覚が消えた。 次は棘くんに声をかける。 「棘くん、聞こえる?」 『しゃけ』 「由衣ちゃんと一緒に戦おう」 『おかか、ツナマヨ』 鈍い反応。 「わかった、じゃあ今度デートしようね。」 『しゃけ』 これで準備は整った。あとは最後の仕上げをするだけ。 「由衣ちゃん、確認するけど貴方は全スキル持ちだよね」 「うん、大丈夫」 私は力を使うか止めるか決断を迫った。 彼女は快諾した。 さあ、始めようか。私たちの逆襲を。 「おい、お前ら何やってんだ?」 先生がこちらに気づいたようだ。近づいてくる。 「あーこれは余興です。先生もどうです?」 私が先生に話しかけた。 「いいじゃん」 そう言うと、先生は持っていた竹刀を置いた。 「じゃあ、俺は逃げる側にまわるぜ。」 こうして、全員が散開した。 まず最初に動いたのは真希ちゃんだ。 「里香ちゃん、よろしく。」 『任せて!いくよ!!』 里香ちゃんは早速呪いを放った。 【爆】 大きな爆発音が響き渡る。 しかし、その効果はそれだけではなかった。 爆風があたり一面に広がると、校舎全体が大きく揺れたのだ。 「なんだ!?地震か?」 当然のごとく、教室は大騒ぎになった。 さらに追い打ちをかけるように今度は窓ガラスが一斉に割れた。 ガラスの破片が飛び散り、生徒たちを襲う。 みんなパニック状態だ。そして、さらなる異変が起こる。 なんと、地面からツタが生えてきて次々と生徒を捕らえていったのだ。 「なんだよこれ!助けてくれー!」 もちろん、捕まった生徒は助けようとするのだが、次から次へと伸びてくるのでキリがない。あっという間に全員捕まってしまった。 そして、身動きが取れなくなったところで、真希ちゃんが口を開く。 「さて、これからみんなに質問します。この中で誰が一番強いですか?正直に答えてくださいね。もし、嘘をついていたらどうなるかわかりますよね?」 それを聞いたクラスのみんなが騒ぎ出す。 「俺が最強に決まってるだろ!!」 「いや、俺だ!」 などと口々に叫んでいる。だが、一向に名乗り出る人はいない。 そんな時、一人の男子生徒が言った。 「お前だよ、山本忠弥。お前が1番つえーよ」 その言葉を聞いて他の生徒がざわめき出した。 無理もないだろう。なぜなら、このクラスの人気者である彼が最強だなんて誰も予想していなかったのだから。 「陰キャの山本が?!」 「ありえないって、絶対何かイカサマしてるでしょ」 戸惑う彼をかばった。しっかり目を見据え「君を信じるよ」 「はぁ? でも、証拠ねぇし」 彼は不安そうな目でこちらを見つめている。 だから私は安心させた。 「わかる。君は勇者」 私がそう言うと彼は驚いたような顔をした後、嬉しそうに笑った。 「ありがとう、金沢さん」 その言葉を聞いた途端、私の心臓がドクンっと高鳴った。 なんだろう、ふわふわしたこの気持ち。もしかして恋。まさか、でもひょっとして。 そんなことを考えながら私は彼と別れたのだった。 それからしばらくして、私たちは里香ちゃんの力を使い、残りの敵を探した。 しかし、敵は見つからなかったため、ひとまず今日は解散することになった。 帰り道、私は里香ちゃんに話しかける。 「里香ちゃん、ありがとうね。」 『ううん、気にしないで』里香ちゃんは笑顔で答えてくれる。でも私は里香ちゃんに対して罪悪感を抱いていた。 なぜならば、里香ちゃんの力を借りなければ勝てなかったからだ。里香ちゃんは優しいから私を責めたりはしないだろう。だからこそ私は余計に辛かった。 「里香ちゃん、ごめんね……私が弱いばっかりにこんなことになっちゃって……」 私は泣きそうになりながら言った。すると里香ちゃんは優しく微笑んだまま答えた。 『何言ってるの?由衣ちゃんのせいじゃないよ!それに、私は由衣ちゃんと一緒に戦えて楽しかったし!』 里香ちゃんは私を励ましてくれた。それが何よりも嬉しかった。私は里香ちゃんに感謝の気持ちを伝えることにした。 「ありがとう、里香ちゃん。私も里香ちゃんと一緒に戦えてよかったよ」 『えへへっ』 里香ちゃんは可愛いな。できることならずっと一緒にいたいなぁ……なんて思いながら歩いていると、急に表情が叫ぶ。突然里香ちゃんの様子が変わった。 『由衣ちゃん大変!』 複数の殺気を感じたらしい。 「偵察しよう」 『今は拙いよ』 そう、まずおちつこう。 現在地は森の出口だ。人影はないが油断禁物。そう考えているうちに一つの結論に至った。それは囮作戦だ。敵が近くに潜んでいるのならばあえて目立つ行動をすることで誘き寄せることができるのではないかと思ったのだ。そこで、私は音で陽動する作戦を提案した。 里香ちゃんはそう言うと、近くにあった小石を投げた。 カキーンという大きな音が響くと同時に、近くの茂みから人影が飛び出してきた。それは予想通り例の二人だった。一人は白髪でロングヘアーの女性だった。もう一人は金髪で短髪の男性だった。二人はこちらに向かって歩いてくる。 里香ちゃんはすかさず次の行動に移る。今度は地面に手を置き、力を込めた。次の瞬間、地面が大きく揺れ始めたかと思うと、そこから植物のツタが伸びてきた。ツタは二人の足に絡みつくとそのまま上に持ち上げた。それにより身動きが取れなくなった二人は悲鳴を上げた。だが、里香ちゃんは容赦しない。今度は手を天高く掲げると、勢いよく振り下ろした。それと同時に植物たちが一斉に動き出し、二人を叩きつけた。まるでおもちゃのように何度も何度も何度も繰り返し行われるその光景はまるで地獄絵図のようだった。やがて満足したのか、里香ちゃんは手を止めた。そこに残っていたのはボロボロになって倒れている男女の姿であった。もはや生きているかどうかすらわからない状態である。それを見て里香ちゃんが呟いた。 『もう終わり?』 彼女はつまらなさそうに言うと私の方を向いた。そして一言だけ言った。 『由衣ちゃん、後はお願いね』 私は頷くと、一歩ずつ彼らに近づいていく。そして目の前まで来ると口を開いた。 「あなたたちの負けです。大人しく降伏してください」 すると彼らは笑いながら言った。 「おいおい、俺たちを誰だと思ってやがる?天下の山田兄弟だぜ?」 それを聞いて思わずため息が出てしまった。どうしてこうも悪役というのは似たようなセリフを吐くのだろうか…… 呆れていると、弟が兄を庇うようにして前に出てきた。そして言う。 「お前こそ何者だ?見たところただのガキじゃねえみたいだな」 「ええ、そうですけど何か?」私は淡々と答える。すると兄は怒りを露わにしながら叫んだ。 「俺たちは泣く子も黙る山田をなめんな!」 「はい、知ってますよ。だから何ですか?」 私は冷たく言い放った。別に挑発するつもりなどなかったのだが結果的にそうなってしまったようだ。その証拠に兄の額に青筋が浮かんでいるのが見えた。弟はと言うと相変わらず黙ったままだ。どうやら完全に舐められているようだ。まあ、どうでもいいが。それより今は目の前の敵に集中すべきだと判断した私は戦闘態勢に入ることにした。まずは里香ちゃんに合図を送る必要があるので彼女の名前を呼ぶことにした。 「里香ちゃん!」 『了解!!』 いきなりツタが生えてきて私たちを取り囲んだ。これで作戦準備完了。留意点は里香ちゃんのスタミナだ。そのためなるべく短期決戦に持ち込む必要があった。つまり速攻あるのみである。幸いにも相手は弱っているので負けることはないだろう。ただ問題があるとすれば一つだけある。それは彼らが逃げ出さないようにすることだ。もし仮にここで逃がしてしまえばまた面倒な戦いになってしまうかもしれないからだ。それだけは絶対に避けなければならないことだ。ということで早速攻撃を仕掛けることにした。まず最初に動いたのは弟だった。彼はポケットから何かを取り出すと私に向かって投げつけてきた。咄嗟に避けると地面に落ちたものを確認する。その正体はダイナマイトだった。しかも導火線には火が付いていたためすぐにその場を離れる。その直後、爆発音が響いた。間一髪助かったみたいだ。ほっと胸を撫で下ろすと今度は兄が動いた。彼は懐からナイフを取り出すと素早い動きで距離を詰めてくる。私は慌てて距離を取るが間に合わず腕を斬られてしまう。痛みに耐えながら傷口を確認するとかなり深く斬れていたようで血が滴り落ちていた。このままではまずいと思った私は里香ちゃんにある指示を出した。 「里香ちゃん!力を貸して!」 『わかった!』 すぐさま強く念じると私のオーラが天使をかたどった。純白の翼に穢れのない体、さらには整った顔立ちをしている彼女はまさしく女神そのものだと言っても過言ではないだろう。そんな彼女を見て驚いている様子の二人に構うことなく攻撃を開始することにした。まず初めに行ったのは弟の方を倒すことだった。というのも先程の戦いで実力差を思い知ったのか腰が引けているように見えたからである。案の定、私が近づくと怯えた表情で後退りした。その様子を見た私はさらに詰め寄るとそのまま押し倒して馬乗りになる形になった。そして逃げられないように腕を掴むと力を込めて握り潰すようにしてやった。その瞬間、骨が砕ける音が聞こえてきたかと思うと同時に悲鳴が上がった。よく見ると彼の腕が変な方向に曲がっていたのである。おそらく骨折してしまったのだろう。しかし、そんなことお構いなしと言わんばかりにもう片方の腕も掴むとこちらも同じようにする。そうして両腕を使えなくしたところで彼の顔を見ると恐怖のあまり泣き出してしまっていた。だがそんなことは気にせずに今度は両足も同じようにしてやることにする。両腕と同様に力強く握ると嫌な音が聞こえたような気がしたが気にしないことにした。それからしばらく続けているとようやく静かになったので手を離してやることにする。手を離すと同時に崩れ落ちるように倒れる姿を見て思わず笑みを浮かべてしまう。そんな時、ふと視線を感じそちらの方を見ると里香ちゃんが物欲しそうな顔でこちらを見つめていた。どうやら彼女も遊びたいらしい。なので私は彼女に声をかけることにした。 「ねえ、里香ちゃんも一緒に遊ぼうか?」 『いいの?!』 彼女は嬉しそうに返事をした後、弟に視線を移すとニヤリと笑みを浮かべた後こう言った。 『じゃあ、一緒にやろっかー』 そう言って彼に近づくとその体を軽々と持ち上げるのだった。そして次の瞬間、なんと頭から地面に叩きつけたのである。それを見た私はさすがにやり過ぎだと思ったため止めようとしたのだが遅かった。鈍い音とともに頭の半分くらいまでめり込んでしまっていた。ピクピク痙攣していることからかろうじて生きてはいるが意識は完全に失っており危険な状態だった。しかし、それでもまだ足りないと思ったのか彼女は再び彼を逆さまにして持ち直すと今度は勢いよく回転させた後に放り投げた。宙を舞う彼は放物線を描きながら落下していき、やがて地面に激突した。その際、グシャッという音がしたが気にすることはなかった。なぜならすでに死んでいるのだから…… 敵を葬り小休止することにした。里香ちゃんは元気そうなので安心した。 そんなことを考えていると突然、頭の中に映像が流れ込んできた。最初は何がなんだかわからなかったのだが次第に理解することができた。それはこの森についての情報だった。どうやらここは迷いの森と呼ばれているらしく、一度入ると二度と出られないと言われている場所のようだ。以前読んだ『禁断の果実』の舞台だ。まさか実在するとは。感慨と当惑と好奇心に心揺れる乙女な自分と男だった記憶が入り混じって複雑な気分だ。深く掘り下げる前に脱出口を探そう。 引き返すのが手っ取り早いが正しい保証はない。迂闊に進めないので里香ちゃんに相談してみた。 『由衣ちゃんなら大丈夫!』 「え?どういうこと?」意味がわからなかった私は聞き返すと彼女は答えた。 『だってここに来るまでずっと一人で歩いてきたんでしょ?』 そう言われてハッとした。たしかに言われてみればそうである。ということはつまり…… 「……もしかして帰れるってこと?」 「うん」 「帰ろうか」 地図で現在地を確認する。その結果、予想どおりだった。荷物は捨ててすぐ出発だ。都度調達すればいい。すると里香ちゃんが悲しそうに呼び止める。 『ごめんね……』 いきなり謝られても困る。理由を聞くと『実はね、私そろそろ帰らないといけないみたいなんだ』 それを聞いて驚いたがなぜか冷静に受け止めることができた。自分でも不思議なくらいだ。その理由はすぐにわかった。彼女が天使だからである。つまり天に帰るということなのだろう。そう考えると寂しい気持ちになった。せっかく仲良くなれたと思ったのに…… そう思って落ち込んでいると里香ちゃんは言った。 『でもね、また会えると思うんだ。だから泣かないで』 言われて初めて泣いていることに気づいた。慌てて涙を拭おうとすると止められた。そして優しく抱きしめてくれた。その温もりを感じた瞬間、涙が溢れ出してきた。結局、泣き止むまでにかなりの時間がかかってしまったがその間、彼女は何も言わずに待っていてくれた。本当にいい子だと思うと同時に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。でもいつまでも泣いていられないと思い気持ちを切り替えた後、ある提案をした。 「ねえ、最後に一つだけお願いがあるんだけどいいかな?」 そう言うと不思議そうな顔をされたので私は言った。 「私にキスして欲しいの……」 里香ちゃんはハッとしたがすぐに快諾してくれた。そしてそっと唇を寄せてきた。柔らかい感触を感じながら目を閉じると彼女の息遣いを感じる。その時間が永遠に続けばいいと思ったその時、頭の中で声が聞こえたような気がした。驚いて目を開けると彼女は微笑んでいた。そこで全てを悟った私はもう一度キスをした後、別れを告げるのだった。 気づくと運動場にいた。誰もいない。教室に戻ろうとしたが一人でやるべきことがある。それはもちろん復讐だ。絶対に許さないし穏便に済ますつもりもない。粛々と体育館に向かう。そこには例の男たちがいた。彼らはまだ生きていたようで、私の姿を見るなり怯えているようだった。まあ、無理もないだろう。なにしろ全身血塗れなのだから…… しかしそんなことは気にせずに近づいていくと彼らのうちの一人が話しかけてきた。 「た、助けてくれ!」 命乞いをする男たちを見て私は言った。 「嫌です」即答する私に対して絶望の表情を見せる男たちだったがそんなことには構わずトドメを刺すことにする。 「さようなら」 そう言って手を振り上げると勢いよく振り下ろす。その瞬間、グチャッという音とともに血が飛び散り肉片が辺りに飛び散った。それを見て満足した私は次に女の方に目を向けた。すると恐怖のあまり失禁していた。 「あらあら、情けないですね」 そう言いながら近づくと今度は顔を蹴り飛ばした。それからお腹を踏みつけたあと、股間を蹴り上げた。何度も何度も執拗に繰り返すうちにとうとう動かなくなった。どうやら死んでしまったらしい。そのことにがっかりしつつも仕方なくその場を後にした。 次は兄たちの番だ。 私は二人のところに行くとそれぞれの顔を見た後でこう言った。 「ねえ、私のこと好き?」 その問いに二人は揃って頷いた。それを見た私は満足げな表情を浮かべると言った。 「じゃあ、死んでくれる?」 躊躇うことなくナイフで刺した。二人とも何か言いたげだがぐっと押し込む。抜くと傷口から大量の血が流れ出た。その光景を見た私は興奮してしまい思わず声を出して笑ってしまった。その後も何度も刺し続けた結果、二人とも息絶えてしまったようだった。 その様子を見ていた私は笑みを浮かべるとその場に座り込んだ。さすがに疲れたので休憩しようと思ったのだ。しばらく休んでいるとようやく落ち着いてきたような気がしたので立ち上がると二人の遺体に近づきながら言った。 「さよなら、お兄ちゃんたち」 こうして私は彼らの元を去ったのだった…… その後、私は学校を出て近くの山へと向かった。目的は一つしかない。それは自殺するためである。理由は簡単で、もう生きる意味がないと思ったからだ。本当ならもっと早く死ぬつもりだったのだが、里香ちゃんと出会ってからは楽しかったし、何より今まで味わったことのない快感を得たことですっかり忘れていたのだ。しかし、今は違う。すでに目的を達成してしまったのだ。後は死んでもいいはずだったのだが、どういうわけかまだ死にたくないという気持ちが芽生え始めていたのである。とはいえ今更どうすることもできないので覚悟を決めることにする。 ちょうどいい場所を見つけた。そこでノートを破ってメモを残すことにした。 とても短い遺書。 『先立つ不孝をお許しください。どうか心配しないで。素敵な友達ができました。名前は内緒。ずっと一緒にいたかったのですが残念ながら無理です。せめてもの償いとしてこれを残しておきます。これを読んでいる人は幸せになって欲しい。それが最後のお願い。
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