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『ようこそ。新しい罪人さん。審判の門をくぐってよくぞ参られました……』
「え?」
突然、女性の声でアナウンスのようなものがかかった。審判の門。確かにそんなことを書いた紙を枕の下に入れて寝たが。
『審判の結果、西田霧絵さん、貴女は地獄行きが決定しました。この最下層の部屋で、裁きを受けていただきます』
「はあ!?」
『裁きを実行します。しばしお待ち下さい……』
「ま、待ちなさいよちょっと!裁きって何?聞いてないわよ!!」
意味がわからない。まるで、私が地獄に堕ちたかのようではないか。私は眠っただけでまだ生きているし、そもそも地獄に堕ちるようなほど悪いことなんてしていないというのに。
「ぐっ……!?」
突然、物凄い異臭がした。鼻がひん曲がりそうなほどのこの臭いはそう、不衛生なトイレを使った時の臭いに似ている。天井の方から、ごおおおお、と滝が落ちるような音が聞こえてきた。まさか、と私は呆然と上を見上げる。そして。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!
音を立てて、茶色く濁った水が降ってきたのだ。文字通り、滝のごとくの勢いで。
「がぼぼぼぼぼぼぼっ!?」
私は水を被り、その臭さに絶句した。これは、ただの泥水ではない。時折固形物が混じり、ドロドロに溶けているこれは紛れもなく。
――い、いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?
私は逃げ惑ったが、そもそも密閉された狭い部屋だ。逃げ場も何もない。あっという間に部屋の中には、排泄物まみれの汚い水が溜まっていく。私の髪にも、肌にも、服にも染み渡っていくそれ。私は絶望の中で思ったのだった。
――翔夜……!まさかあいつ、全部知ってたんじゃないでしょうね!?だ、騙された……っ!!
吐き気を堪えながら、私は思う。大丈夫、これは夢。夢から覚めたらいつもの現実が待っている。だから。
――目が覚めたら……覚えてなさいよっ!!
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