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「おじゃましまーす」  詩祈の唯一の友だちである黒澤柊磨(くろさわとうま)が家にやってきた。  彼は、高校入学と同時に仲良くなった貴重な人物。どちらかというと優等生タイプの詩祈とは違って、学校はサボりがちだ。制服は着崩し、耳には複数のピアスを開けて髪は明るい色に染めている。  正反対の彼となぜ知り合ったのかというと、柊磨がゲームに出てくる限定キャラのマスコットをカバンにつけていたのだ。  それは手に入れることができず悔しい思いをしていたもの。思わず自分から声をかけていた。  それからだ。ゲームの話で盛り上がり、何かとつるむようになって、今に至る。 「詩祈くんのお友達?」  陽奈子が部屋から出てきて声をかけてきた。 「黒澤です」 「姉の陽奈子です。よろしくお願いします」  やわらかい笑みで自己紹介をするから、柊磨は慌てるように答えた。 「よ、よろしく、おねがいしますれす」    デレデレしている柊磨の姿に、不快感を覚えた。 「行くよ、柊磨」  部屋に入るなり、柊磨が詰め寄ってきた。 「すげえ、きれいな人じゃん!」 「そう?」  確かにきれいな人だと思うが、あえて同意しなかった。 「あー、詩祈に言ったのが間違いだった。女に興味ないもんなー」 「人って面倒くさいから」 「いいなー、あんな姉ちゃんができるなんて。うちの兄貴と変えてくれ」 「柊磨のお兄ちゃん、優しいと思うけど」 「詩祈には優しいんだよ。それより新作ゲーム持ってきたぜ。家ではゲーム禁止令出てたから早くやりたくてさ」  いつも柊磨は、詩祈の家で勉強すると言って家にやってくる。だが、ほぼゲームしかしていない。
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