「ひみつの消しゴム」

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 「ねえ、あーちゃん。私に何か隠し事してない?」  取り止めのない話の途中、突然私の顔をじっと見ながらそう言ったしーちゃんの言葉に、私の心臓が一度ドクンと大きく鳴った。  「隠し事?」  何とか平静を保ちながら私は聞き返す。  「うん。隠し事。だってあーちゃん、昨日からずっと変だもん。」  しーちゃんは全てを見抜いているようだった。自分は泰然自若でいられていると思っていたのに、しーちゃんには全く通用していなかったらしい。    してないよ。気のせいじゃない?  そんなしーちゃんに対しても、そう嘘を通そうとする自分がいた。一度嘘を吐いたのだから、その嘘を貫き通さなければいけない。そんな変な義務感に駆られていた私は即座に返事をすることが出来なかった。  「そうかな?」  答えを渋る私の口からは一時の怪しい間を埋めるための相槌だけが出てきた。その言葉にしーちゃんは力強く頭を縦に振った。  「何年一緒にいると思ってるの。あーちゃんがいつもと違うことくらいすぐにわかるよ。」  そう。一緒に過ごしたその何年間、私はずっと秘密事をしている。それを知ったらしーちゃんはきっと幻滅してしまう。もしかしたら泣いてしまうかもしれない。仲良しの私がこんな人間だって知ったらきっと、もう一緒にはいられない。  
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