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「でもそんなの間違ってるよね。しーちゃんの幸せだもん。私はそれを邪魔したの。私の我儘で、しーちゃんの人生おかしくさせちゃったかもしれない。
そうわかってても言い出せなかった。だってこんな事知ったらしーちゃん、私の前からいなくなるんじゃないかって思ったから。もう私の事嫌いになるかもしれないって思ったら私、この嘘を貫こうって、そう思ったの。」
もう既に私の目を覆い始めている涙を絶対に溢すまいと、私は必死になった。泣いてはいけない。悪いのは私だから。
「許してなんて絶対に言わない。だってこんなの、盗みと同じだもん。これからも私と仲良くしてなんて言わないよ。
でも言わせて。本当にごめんなさい。」
しーちゃんの目を見ながら、私はそう言った。しーちゃんは言葉を失っていた。不思議はない。ずっと隣にいた私が泥棒だったなんて、信用を失うはずだから。悪い未来しか見えない私の頭の奥には見たこともないしーちゃんの顔しか浮かんでこなかった。これが夢ならいいのに。夢なら起きた後、一生この秘密を持って生きていくのに。格好をつけたような事を言っても、しーちゃんから離れるのを争っている自分がいた。どうしたって私は自分勝手だ。そんな自分に幻滅した。
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