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「何か、悲しいよ。あーちゃん。」
ようやく全てを理解したらしいしーちゃんの口から最初に出てきたのは、そんな台詞だった。
「ごめんなさい。泥棒だって知って信用なくしたよね。でも他には何も取ってないよ。それっきりだから....」
妙な心配が沸いた私は場にそぐわずそんな事を口にした。でもしーちゃんは首を横に振った。
「違うの。その事じゃなくて。あーちゃんは私を信じてくれてると思ってたって事。」
しーちゃんの言葉の意味がわからず、私はしーちゃんを見た。
「私がそんな事であーちゃんを嫌いになったりすると思った?あの時は確かに知ったら怒ったかもしれないけど、でも私たちの仲ってそんな程度だって思ってたんだね。」
夕日に染っているのにどこか温度が低く寂しそうなしーちゃんの横顔がそう言った。それを聞いて、私ははっとした。
「違うよ!!私しーちゃんのことずっと大好きだし、大切だよ!一番信頼してるし、私が持ってない力を沢山持ってるし、すっごい尊敬もしてるの!だからずっと私はしーちゃんといた。しーちゃんと一緒にいたくて、誰に何言われてもしーちゃんと一緒にいたの!」
思いもよらぬ所でしーちゃんに悲しい思いをさせてしまったと焦った私は、必死になって想いを伝えた。あまりの声の大きさと勢いにしーちゃんは驚いて、目を丸くして私を見ていた。が、次の瞬間その顔が綻んで、しーちゃんは笑った。
「そんな事目を見て言われると、何か照れちゃうなあ。」
「ご、ごめん...」
急に恥ずかしくなった私は目を伏せた。
「でも、わかった。ありがとう、あーちゃん。」
そんな柔らかい声に再び顔を上げると、今度はちゃんと夕日の色に温められたしーちゃんの笑顔があった。その顔はいつも以上に優しい色をしていた。
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