「ひみつの消しゴム」

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 しーちゃんとの毎朝、何気ない会話をしながら学校に向かう。話好きのしーちゃんは、学校に着いても閉じることがない口を動かしながら、私と色んな話をした。もうすぐ試験が迫っている為、私たちが一番盛り上がる話題と言えばそれが終わった後何処に行こうという話題だ。もうしばらく遊びにも行っていないので、私たちは目先の人生の分岐点よりもその後の楽しみに話を弾ませた。  しーちゃんと楽しく話している内は不安を忘れられる。でも授業中や一人でいる時はあの事を思い出してしまう。つい昨日まで私は受験に対する怖さで一杯だったのに、今や頭の中はあの白い物体の事ばかりだ。  やはりしーちゃんに真実を告白すべきなのか。それともその秘密をこのまま墓場まで持って行くべきなのだろうか。  もし真実を言ったら?しーちゃんはすごく傷ついてしまうだろう。いくら前の話だからって、ずっと信用していた人が嘘を吐き続けていたと知ると、きっとしーちゃんは悲しむだろう。もしかしたら信用を全て失って、もう口も聞いてくれないかもしれない。私たちの十年間はその大きな過ちのせいで灰となってしまうかもしれない。私は何よりそれが怖くて仕方なかった。  絶対一緒の高校に通おうね!  そう約束して今までやってきたのに、それも断念しなければいけない事態になるかもしれないのだ。
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