「ひみつの消しゴム」

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 あの禍々(まがまが)しい物体のせいで、私の一日は侵された。ふとした時に浮かぶ、全てを晒した時のしーちゃんの軽蔑した顔。今までそんな顔見たこともないのに、何故かわかってしまうその表情は、全ての終わりを予言している。一度壊れてしまったら、きっともう元には戻れない。大好きなしーちゃんはもう、私の元には戻ってこない。  そんな悪い予感が頭の中を埋めつくした為、本当の事を話して自分自身を解放するのを私は渋った。告白をして得をするのが私だけなら、それをする必要はないだろう。私が嘘つきだと知っているのは私だけなのだから、わざわざそんなリスクを負う必要もない。何も言わずこのままずっと平穏に暮らしていくのが、私たちの先を守る唯一の方法だろう。  その日の夜更け、閉じた参考書を前に右手の引き出しを開けて、消しゴムを見つめながら私はそんな事を考えていた。
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