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マンションのベランダから、川を眺める。
川沿いの遊歩道に覆いかぶさる桜並木は、県外からも写真家がやって来るほど有名らしい。
むき出しの枝々。寒々しい光景の中に、ポツリとひとつ春の色を見つけた。
もうすぐ、あの季節が到来する。
数日後。
川沿いの遊歩道は、多くの人でにぎわっていた。
誰も彼もが頬を桜色に上気させ、こぼれんばかりに樹上で咲き誇る花を見上げている。春の陽気よりよっぽど明るい雰囲気の人いきれ。
それを私は、今日もマンションのベランダから眺めている。
私も本当は、あの中に入ってあんな顔をしていたい。でも、あんな屈託のなさは、とっくの昔に失ってしまった。
桜の咲き誇る季節にはいつも、自分の陰鬱さを思い知らされる。
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