旭のバレンタイン

4/8
前へ
/67ページ
次へ
* * *  中央支部へ辿り着く途中で、探していた彼を見つけた。  厚手のジャンパーを来て、小さな紙袋を片手にどこかへ向かう聖夜。一体どこへ行くんだろう……。  私は、こっそりその後をつけ始めた。  薄く積もった雪に、彼の足跡がつく。その足跡をなぞるように、私は彼を追いかけていった。  どんどん、町の中心から外れていく。建物も少なくなっていくし……こんな町外れに、どんな用事があるんだろう。私は不思議に思いながらついて行ったんだけど……その謎は、すぐに解けた。 「はー!着いた!!」  聖夜がそう言って立ち止まり、伸びをしたのは……天ヶ原町の、霊園の前。  ご先祖さまのお墓参りかな?私はそう思いつつ、聖夜の少し後ろをついて行く。でも、その予想は大きく外れたんだ。  彼は、あるお墓の前にしゃがみこんで……。 「……久しぶりだな。旭」  私の名前を、優しく呼んだ。
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加