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「今日さ、バレンタインデーって言って、好きな人とか、お世話になった人とか……とにかく、大切な人にチョコをあげる日なんだ」
聖夜はそう言って紙袋から星型のチョコレートを3個取り出す。カラフルなトッピングで彩られたそれは、美味しそうだけど……キラキラしてて、食べるのがもったいない感じ。
「俺もチョコを作ってみたんだ。旭、甘い物って好きかな?」
甘い物……あんまり食べたことないけど、前に聖夜が作ってくれた甘い卵焼きは本当に美味しかったな。きっと、聖夜が作ってくれたものなら、なんだって美味しいよ。
「喜んでもらえてるといいんだけどなぁ……」
聖夜は困り顔で笑いながら、お供えしてくれたチョコレートを1つ手に取って……口に運んだ。
「……うん、よかった。ちゃんと美味しいな、これ」
私も味が知りたいな。そう思って、私はチョコの近くに顔を寄せて、その香りを嗅いだ。
香りと一緒に、とろけるような甘さが口に広がる。やっぱり……聖夜が作ってくれるものは美味しいね。こんな素敵なお菓子、持ってきてくれてありがとう。
私は傍らの聖夜に微笑みを向けるけど……残念ながら、彼に私は見えない。それがもどかしくて、寂しくて……胸が痛む。
でも、聖夜は、まるで私が傍にいるかのように、優しく声をかけ続けてくれたんだ。
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