旭のバレンタイン

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 もちろん聖夜には触れられないし、聖夜も私には気づかないけど……それでも、そうせずにはいられなかったんだ。  ……聖夜が幸せでありますように。いつだって笑顔でいられますように。この気持ちをどうにかして伝えたくて、私は腕に力を込める。  ……大好きだよ。大好き。私、聖夜のことが大好きなの。聖夜が私のことを想ってくれているように、私も聖夜のことを大切に想ってる。  どうか……この想いが、届きますように。  そう願った時だった。 「あれ……雪だ」  空から、はらはらと真っ白な雪が降ってきた。雪は花びらのようにふわり、ふわりと……私たちに舞い降りる。  冷たいはずなのに……なぜか、温かみのある、優しい雪。まるで、聖夜のことを優しく包んでくれるような……そんな雪だった。  なんだか、私の想いが空に届いたみたい……。 「……旭、もしかして見守っててくれてるのかな」  聖夜はそう言って、空を見上げる。雪が、彼の目元に触れ、雫となって頬を伝った。
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