花琳のバレンタイン

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「包丁はさ、叩きつけるんじゃなくて引くんだよ。ほら、さっきよりもスイスイ切れてるだろ?」 「ほんとだ……」  まるで、魔法を見てるみたいな気持ち。それだけ、海奈は手際が良くて……。私も、こんな風に包丁を扱えるようになりたいなぁ。これからは、もっと練習しなくちゃ。 「……よし、切れた。次は湯煎だ」  湯煎……チョコをお湯で溶かすのよね?それなら、私にもできるかも……。 「海奈、私がやってみてもいい?」 「あ、うん。いいよ。じゃあ任せる!」  海奈は明るく笑って、私にチョコを預けてくれた。  えっと……まずはお湯を沸かして……。それから、チョコをお鍋にいれるのよね?大丈夫よね??  私はドキドキしながら、グラグラと沸騰している鍋にチョコを直接入れた。  でも、チョコは溶け始めたけど、全然まとまらない……。これを型に入れて冷やして、本当にチョコができるのかしら……。 「姉さん、できた?……って、もしかして、直接入れちゃった……?」 「え、ええ……やっぱり、私、間違えてた……?」 「……うん。ちょっと惜しかったな」  海奈は苦笑いして火を止めた。 「まず、お湯は沸騰させなくて大丈夫だよ。それから……チョコはボウルに入れて、間接的にお湯で温めるんだ」  ……全然惜しくないじゃない。思わず、ガックリと肩を落としてしまう。
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